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FRP戦略コラム – FRPの 適材適所

2015-06-19

ここ数年、軽量化を軸として適用拡大を軸に注目される FRP ( 繊維強化プラスチック )。


ところがプリプレグや基材、そして樹脂を購入してとりあえず形を作る、
というやり方ではなかなか商品にならず一品物の試作で終わってしまうケースが後を絶ちません。

 

今日の記事では FRP戦略コラム として該材料の適用で先を行く航空機業界、
そして欧米の自動車メーカーの動向を見ながら必要な戦略について述べてみたいと思います。

 

今週のメールマガジンでも述べましたが、20年以上に民間航空機業界にてFRP適用に関する競争が始まりました。


BoeingとAirbusがその主役です。

 

元々尾翼の一部、内装品、ストリンガーといった一部にはFRPが使われていましたが、
なかなかその後の拡大が進まなかったこの業界に大きな風穴を開けたのがBoeingのB787です。


驚いたことに尾翼だけでなく、主翼、そして胴体に至るまでその多くの部分にFRPを適用しました。

 

これに呼応するように2015年初出荷のAirbusの最新機体A350XWBも多くの一次構造材にFRPを適用し、B787に対してFRP適用についてそん色ないということ市場に示しました。

 


ところがB787でFRP適用で世界をリードしたBoeingはその次に販売するB777XでFRPの適用について、

「 適材適所 にする」

という適用先削減の方向性を表明します。


http://www.bloomberg.com/news/articles/2013-11-17/boeing-777x-borrows-dreamliner-wing-while-dodging-787-s-stumbles

 

A350XWBを世に出したAirbusが次にどのような機体を出してくるのかはまだわかりませんが、
少なくともBoeingはFRPの適用先の選択を開始しています。

 

 

そしてメールマガジンでも述べたように自動車業界も同じです。

 

FRP適用で最先端を走るBMW。

i シリーズで徹底管理された部品管理ツールが最大のウリです。


この管理ツールでは各部品の設計寸法公差、非破壊検査要件といったものが網羅されています。


また、高速成形を可能にしたプリフォーム技術と高速硬化マトリックス樹脂、
そしてウォータージェットを主軸にした自動トリミングシステムといった半自動成型システムを採用。

人の手を極力減らすことで低コストかはもちろん、品質安定を目指しています。

さらにはSGLと共同で事業を始めることで強化繊維から手中におくという、
素材掌握による材料から製品までの一気通貫の支配と、素材供給停止のリスク回避。

 

もちろんBMWだけの技術ではなく、多くの企業の技術が集結しているのは言うまでもありませんが、
非常に高いレベルでFRPの量産化を実現しています。

 

ところが、このBMW i シリーズもはやりコンセプト実証車であるというのが妥当な見方です。

 

残念なことにFRP車体だけではなく、モーターやバッテリーといった駆動系を考慮して、
500万円前後で販売できる車ではありません。


恐らくBMWも赤字覚悟でやっているはずです。

 


それでもこれをやっている理由は主な理由は、

 

「自動車にFRPを用いるにあたり、どのような部品設計思想が必要か」

 

という情報を蓄積したい、ということに尽きるのではないでしょうか。

 


恐らく、今の i series は現在の自動車をベースに、主には「材料置換」を行っているにすぎません。

 

しかしながらBMWは材料置換だけでは限界があるということを理解しており、
FRPという素材の特性を理解した設計とFRPを用いるメリットのある自動車の構造形態を知ろうとしていると考えています。

 

やはりここには重量と剛性を考えて、鉄系がいい、アルミがいい、FRPがいい、
という大まかなセクションで理解をした後、
上述した i series で実際に作ってみて課題やビジネス性を検証していると思います。

 

 

このように欧米の企業は他の事業で得た収益を用いて、
FRPのコンセプト実証と課題の抽出を行い、その上で適材適所の戦略を立てています。

 

このアプローチは体力のある大きな企業でなければできないことです。


とはいえ、FRP業界で名乗りを上げて事業性を成立させるには似たようなアプローチは必須ではないかと考えます。

 

 

では、資金にそれほど余裕のない企業がFRPに関してビジネス性も考慮した「適材適所」の思想を獲得するにはどうしたらいいのでしょうか。

 

それは、

 

「可能な限り材料から製品までの広い範囲を自らの技術で網羅する。各要素技術で他企業の協力が必要な場合、パートナー間では可能な限り技術情報の共有を行う」

 

です。

 


材料は買い物、という考えをしてしまった時点でその後の設計、製造工程との間にかい離が生じる可能性もあり、

「材料の供給は行わない」

といったリスクをいきなり背負うことになります。

 

特に日本の企業において、FRP材料メーカーと材料よりも川下にある企業間の協力がうまくできていない傾向が見られます。


もしFRP材料メーカーの協力が得られないのであれば、自社で材料研究開発をやるという意気込みも必要です。(FRPコンサルタントではマトリックス樹脂の自社開発サポートも行っています)

このように可能な限り広い範囲を自社で完結させる、という姿勢がとても重要です。

 

この状況下で、小さな部品でもいいので一つ作って市場に売り出すということを行うことで、
上記のBoeing、Airbus、BMWといった企業も蓄積している「ビジネス性と技術課題」に関する情報を蓄積できます。

 

 

 

とはいっても他社の技術が必要な時があるかもしれません。

一例としては日本が比較的得意な成形技術。

 

協力会社に成形技術の協力を仰ぐ場合、材料の特性、例えば樹脂の粘度や線膨張係数といったものをひた隠しにしてしまうと、成形メーカーはどのようなパラメータを制御すべきか、またどのような成形技術が必要なのかわかりかねる場合も出てきてしまいます。


上記は成形メーカーの例ですが、材料、プリフォーム、トリミング、検査といった要素技術で協力を仰ぐ場合でも同様で、ある程度は開示をしないと要素技術を持っている企業にとっても、


「自社の技術をどのように応用すればいいのかわからない」


といった事態に陥ります。

 

自社の技術をパートナーに公開するのは勇気のいることかもしれませんが、
協力会社の力を引き出すには必須の基本姿勢です。

 


これらの状況が整った上で、小さな製品からでいいので市場に出してみるのです。

自社だけで完結できれば理想ですが、どこかの企業のある部品という形でもいいので出してみます。

 

一度市場に出て様子を見て、その上でビジネス性の判断基準の醸成、
技術的課題に関する蓄積を行い、どのような思想の製品を作れば自社の技術を生かしてFRP業界で活躍できるのか、ということが見えてくるはずです。

 


実際にクライアントの方とお話しするときには、


「現在自社で持っている技術を最大限に活かしながらすそ野を広げていく」


という戦略をもって進んでいくことの必要性を強調するようにしています。

 

これこそがFRPの業界においてビジネス性を成立させるために必要な「 適材適所 」を見極めるための知見の基礎となるからです。

 


この記事をご覧の方の組織にとっても有益な情報であれば幸いです。

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