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銅 ( Cu ) の添加による ポリアミド ( PA )の 耐熱劣化向上 に関する研究

2015-04-10

本日はFRP学術業界動向として、先日の記事で少しだけご紹介した、

銅 ( Cu )の添加による ポリアミド ( PA )の添加による耐熱劣化性能向上

に関する研究についてご紹介します。


研究の一例を以下に示します。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/koron/64/6/64_6_380/_pdf

 

高分子論文集 に掲載されていた上記の論文は、
ポリアミド66 ( PA66 )に塩化第二銅・二水和物を微量添加し、
耐熱劣化性能を調べる一方、粘度による分子量評価、IR測定、NMR測定を実施し、
Cu 添加による PA の耐熱劣化性能向上メカニズムを明らかにしよう、というものです。

 

本研究で行った Cu の添加量(塩化第二銅・二水和物から添加量換算)は35、70、700ppm。
Cu 添加した PA66 を140℃環境で最長96時間、熱劣化を実施。

(Cu添加量が少ないということは意外かもしれません)

 

熱劣化を実施した後の PA66 (強化繊維なし)の引張試験を行ったところ、
140℃、96時間の劣化後には30%以上強度が低下した Cu 無添加の PA66 と比較し、
Cuを添加したものは同劣化後に14%程度強度が上昇したという結果が示されています。


Cu の添加によって熱劣化ならぬ熱回復上昇を起こしたと言えるかもしれません。

 

 

Cu 添加の効果は比較的大きく、熱劣化による分子量減少、吸水率の増加(ただし、Cu添加量700ppmでは減少)赤外吸収の吸光度変化といった多くの変化が確認されています。

 


考察において、なぜ Cu 添加によって熱劣化性能が向上するのかは明確にはわからないと書かれていますが、今回ご紹介した論文では Cu 添加による以下の事象がとらえられているという可能性について言及されています。


– NMR、IRの測定結果からアミド基の分子運動が変化している


– 熱劣化温度がガラス転移温度以上融点以下であることから、非晶部分の立体構造が変化している


– 銅イオン分子が配位によってアミド基とカルボニル基が共鳴構造を取りにくくなり、熱劣化である水素原子放出が起こりにくくなる


– 熱劣化工程において、 Cu が PA66 中を拡散し高分子鎖の熱安定化へつながっている

 

 

つまり、


Cuが PA66 のアミド基と相互作用を持ち、分子中に分散することで熱に強い分子構造へ変化させている


ということが様々な分析によって裏付けられたということでしょう。

 

 

 

なかなか解明とまではいっていないようですが、実際量産されている PA の耐熱劣化性能向上技術の仕組みを考える一つのきっかけになるかもしれません。

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