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はじめてのFRP 汎用FRPのマトリックス樹脂 不飽和ポリエステル ( UP )

2015-04-06

今回の「 はじめてのFRP 」では、主にガラス繊維を強化繊維とする GFRP のマトリックス樹脂として用いられている、
不飽和ポリエステル についてご紹介します。


ポリエステルというのは、多価カルボン酸 と ポリアルコール との重縮合体であり、
ポリエステルプレポリマーに硬化剤であるスチレンモノマーとラジカル重合開始剤を加えたものを、
一般的に 不飽和ポリエステル といわれ、GFRPのマトリックス樹脂として多く使われています。


※不飽和ポリエステルの化学式
http://www.chemical.meiden.co.jp/pages/book/handbook.html

 

架橋反応の最中に副生成物が生じないため成形がしやすく、
また開始剤の選択によって常温硬化から170℃硬化まで硬化システムを選択することも可能です。

 

不飽和ポリエステル は価格が安く、液状のまま使用できるといった利点がある一方、
耐熱性、難燃性、耐加水分解性、耐アルカリ性に劣り、硬化収縮が大きいなどの弱点もあります。
また、大気中の酸素による硬化阻害が生じる可能性も考慮する必要があります。

 


日本での生産量は1990年にピークを迎えた後に減少に転じていますが、
世界的には 不飽和ポリエステル の需要は2009年以降ほぼ横ばい状態のようです。


不飽和ポリエステル の日本メーカーとしてはディーエイチ・マテリアル、
ジャパンコンポジット、昭和電工、日本ユピカの4社となっています。

 

強化プラスチック協会誌においてDIC株式会社の冨山氏が述べていますが、
不飽和ポリエステル に対する最近の動向としては、環境対応、成形法、高靭性化があげられるとのことです。


環境対応としては、スチレン(モノマー)が2014年11月に特定化学物質に移行したため、
低スチレン化、脱スチレン化が求められ、
また原料をバイオマス由来にする、強化繊維にケナフのような天然繊維を用いる、
常圧溶解法を主体とした強化繊維の分離・回収並びに再利用といったリサイクルも検討されているようです。


成形法としては VaRTM が主体であり、オープン成形と比較し臭気が少ない、
品質が安定しているといった理由で普及が期待され、
また高靭性化に対しても 不飽和ポリエステル の改質により物性が向上しているとのことです。

 


かなり歴史のあるマトリックス樹脂ですが、
ここ10年でみると生産は縮小傾向にあります。


スチレンが特定化学物質に移行され、タクトタイムの短いエポキシ樹脂も登場するなど、
今後の見通しは厳しいようですが、今なお10万トン近く使用されている歴史ある樹脂材料であり、今後も使い続けられるものであると考えます。

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