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FRP学術業界動向 – 自己修復 技術

2015-04-03

今日は Composite Part A ( Elsevier )のFRP関連の論文から、
「 自己修復 」に関する技術をご紹介します。

 


FRPの適用拡大に必須の信頼性。


FRPの信頼性向上の障害のひとつとなっているのは、
内部欠陥の多さとその検知の難しさです。


どうしても見逃される可能性のある欠陥が存在する。


この潜在的な欠陥に対する対策として取り組まれているものの一つが、

自己修復

です。

 

10年以上前に積極的に取り組まれていたのは、
コアシェル構造で硬化剤と主剤が粒子状態で分散しているというもの。


FRPの破損が生じるとこの粒子が壊れ、コアの中にある主剤と分散している硬化剤が接触することで硬化が始まるという仕組みです。


開口破壊である Mode I の破壊靭性回復に対して高い効力を発揮しました。

 

 

そして、2015年1月に発行された論文で述べられていたのは、
Poly(ethylene-co-methacrylic acid) (EMAA)による自己修復です。


http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1359835X14002917

 

Meure氏が2009年に取り組み始めたEMAAによる自己修復技術に関する論文では、
EMAAの粒子をCF/Epoxyの系に導入し、Mode I の破壊靭性を完全に回復することに成功しています。

ただし、EMAA は硬化剤であるアミン存在下では水酸基と反応して水を生成する反応があるため、
内部欠陥や内部圧力が生じるといった問題もあったようです。

 

上記で紹介した論文では汎用エポキシに、 Cloisite 30B というナノクレイを添加した材料に対し、
EMAA での自己修復機能をみるというものです。


修復は損傷を受けたFRP材料を150℃で30分という時間加熱することで、EMAAが溶融。
溶融したEMAAは損傷個所に入り込み、新たな化学結合を形成して強度を回復するというシステムとのことです。


引張などの強度をみると、損傷なしのものと比較し、損傷導入後に再加熱工程にて補修したものについては、強度、伸びともに50%以上回復しているという結果が出ています。


EMAAの投入量によって回復率はことなり、EMAAを5vol%または15vol%加えることにより、
それぞれ68%、85%の強度回復が実現できたと書かれています。

 

 

この様な損傷を自ら修復するという「 自己修復 」もFRP機能性発現の1選択肢です。

 

実際のFRP成形工程では高い圧力、温度がかかるため、
自己修復のための媒体がマトリックス樹脂とアロイ化(相溶する)という可能性もあります。

 

実際の生産工程を考慮しながら材料信頼性向上の1手として自己修復というものを考えるのも一案かもしれません。

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