Green Composite に関連する学術業界動向
先日の記事でも紹介しましたが、
FRPの適用拡大に伴い注目される Green Composite 。
今日は Green Composite に関連する論文をご紹介しながら、
学術業界の動向を見てみたいと思います。
1.Chemical Surface Modification of Wheat Straw Fibers for Poly propylene Reinforcement
農業活動での廃棄ゴミから抽出することのできる Lignocellulose (リグノセルロース)を、
FRPの強化繊維として用いるにあたり、その繊維の表面に施す処理に関連する論文です。
Lignocellulose は主に藁(わら)から取り出せるもののようです。
航空機を始め、ハイパフォーマンスな性能を求めるFRPのマトリックス樹脂には、
エポキシのような高耐熱の熱硬化性樹脂が用いられていますが、
ポリプロプレンのような汎用樹脂でFRPを作るということも行われています。
この際、ポリプロピレンは非極性であるため、
極性分子であるセルロースなどとの相溶性が低いという問題があります。
この論文では繊維の表面に無水酢酸によるエステル化処理を施すことで、
ポリプロピレンとの相溶性を上げるという研究について述べられています。
この表面処理によりリグノセルロースの安定熱温度が246℃から50?60℃上昇し、
Vfは不明ですが繊維強化したポリプロピレンは引っ張り弾性率で57%、
曲げ強度と弾性率でそれぞれ31%、70%の改善がポリプロピレン樹脂単体と比較して見られたとのことです。
これもセルロース繊維の表面処理に関する論文です。
この論文では無水酢酸に加えてグリシジルメタアクリレートでの表面処理も行っています。
使用されているマトリックス樹脂はPoly(ethylene-co-vinyl acetate)。
表面処理条件を変更したセルロースの強化により、
物性は改善するようですが、繊維の凝集が起こるなどの現象も起こることが述べられています。
今年のJECでも展示の多かった Flax (麻)に関する論文です。
この論文ではFRPの強化繊維として Flax を用いることで減衰効果が得られると書かれています。
いわゆる、FRPの機能性に関する研究ですね。
Flax の表層にポリオールの処理を施した場合、
振動状態にある強化繊維の表面において stick-slip とよばれる現象により、
ポリオールと細胞壁や表層の微小繊維との間で水素結合の断裂や再結合を繰り返すことで、
振動減衰能力を発現すると述べられています。
ここ半年以内の論文の中で Green Compoiste に関連するものとして、セルロースの表面処理や麻の減衰特性に関する論文をご紹介しました。
学術業界でいうと Green Composite に関する発表は今現在はそれほど活発ではないという印象です。
どちらかというと学術業界では Green Composite に関連する研究が数年前に活性化し、今はひと段落したというのが正しいのかもしれません。
その一方で、産業界では今現在この領域の話が活発なのも事実。
再び Green Composite の基礎研究が見直され、本格的な適用拡大における課題解決のきっかけを提供する可能性もあるかもしれません。