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三次元織物を強化繊維としたFRPのBearing特性と設計許容値(A、B値)算出法

2026-05-19

FRPの強化繊維の形態として代表的なものの一つに織物があります。

平織、朱子織、綾織りといったものはその代表例です。

 

織物のうち三次元織物を強化繊維としたFRPについて、Bearing特性を評価した事例とばらつきを考慮した設計許容値算出法の一例をご紹介します。

 

 

三次元織物とは

織物は通常面内で複数方向から糸を織り込むことで作製します。

三次元織物は面外、つまり層間に糸を織り込むことで補強するという特徴があります。

 

どのような外観かは以下のような参考情報をご覧いただくとわかりやすいかと思います。

Textile Reinforced Structural Composites for Advanced Applications / Research Gate

 

層間方向に強化繊維が織られる形で補強されることから、通常の織物と比べて異なる特性、特に層間方向の特性が高まる傾向にあります。

 

三次元織物については過去にも取り上げたことがあります。

 

※関連コラム

三次元織物のファンブレード

 

 

三次元織物は主に2つのグループに分けられる

参考にしたのは以下のreview論文です。

Open Access なのでどなたでもご覧いただけます。

Mohamed Nasr Saleh et al, Recent advancements in mechanical characterisation of 3D woven composites, Mechanics of Advanced Materials and Modern Processes, 2017, 3, 12

 

この冒頭に書かれているのが、三次元織物のグループ分けです。

Binderと表記されている層間方向の補強繊維が当該方向に複数層入り込んで固定するのがthrough-thickness (TT)、隣接した層を固定するlayer-to-layer (LTL)とのこと。

主にこの2つのグループに分かれることがポイントとなります。

 

評価対象としたのは2種類のTTとLTL 1種類

前出の参考情報に評価対象として記載された三次元織物の形態は下図に示す3つです。

評価対象となった三次元織物image above was referred from Mohamed Nasr Saleh et al, Recent advancements in mechanical characterisation of 3D woven composites, Mechanics of Advanced Materials and Modern Processes, 2017, 3, 12

 

図中左からORT(orthogonal interlock)、LTL、AI(angle interlock)とのこと。

ORTとAIはTTの一例です。

 

 

耐ファスナ特性評価の一つであるBearing

FRPの材料試験にある程度慣れている方でも、Bearingという試験についてはあまり聞いたことが無いという場合もあるかもしれません。

どのような試験かは以下の動画を見ていただくのが良いと思います。試験対象はCFRPです。

動画のものはSingle lap jointというタイプのもので、2枚の金属等の平板でFRPを挟み込む形で評価するDouble lap jointもあります。

さらに締結部は1か所のものだけでなく、2個所やそれ以上の場合もあります。

 

これを見ていただくとわかるようにFRPに貫通孔をあけ、その中をボルトなどの締結部品を通してそれごと引張ることで、せん断特性を見ています。

このような試験のことをBearing testと言います。

試験規格の一例はASTM D5961です。

 

 

三次元織物を強化繊維にしたFRPはその形態によって異なるBearing特性を示した

前出のreview論文では三次元織物を強化繊維としたFRPのBearing特性に関する評価結果も示されています。

強化繊維は中弾性高強度の炭素繊維IM7で、12Kもしくは24Kとのこと。

結果はいくつかの切り口から述べられています。

 

荷重の方向

積層方向に対し、どのように力をかけるのかによって結果は異なります。

ただ、ORT、LTL、AIのいずれも貫通孔を起点としたFRPの大破壊は起きず、マトリックス樹脂の破損と強化繊維の変形にとどまったとのこと。

 

荷重方向が強化繊維の配向と同じ場合

加重方向が強化繊維と同方向の場合(試験方法はsingle lap joint)、穴加工が無い場合と比べて24.7から32.7%の剛性低下が認められたとも書かれています。

この低下率で何を議論できるのかは難しいところですが、個人的な印象だけでいうとやや大きいと感じています。

 

荷重方向が強化繊維の配向と異なる場合

これはSS線図で示されています。どれも降伏している様子がわかります(試験方法はdouble lap joint)。

Bearing strainが50%程度までは顕著な差は認められませんが、それ以降になるとLTLの応力低下がまず始まり、次にAI、最後にORTとなることから複数の層間方向を同時補強するTTの方がBearingに対する耐力が高いことが示されています。

層間破壊を抑制する効果は、強化繊維と異なる方向に荷重した時の方が顕著に出たことが本結果の背景にあるものと考えます。

 

 

以下、Bearing試験について少し補足をしておきます。

 

 

 

Bearing試験の荷重伝達にはBearingとBypassの2種類ある

これは言葉で説明するのが難しいのですが、Bearing試験中に生じる荷重としてBearing loadとBypass loadという2種類があります。

貫通孔を加工された後、ボルトなどで締結された2つの部品について、Bearingを経由して片側からもう片側に荷重が伝わるのがBearing load、Bearingを経由せず、そのまま片側の部品に荷重が伝わるものをBypass loadというようです。

以下の図が最もわかりやすいと思います。

Bearing試験中はBearing LoadとBypass loadの2種類の荷重が発生する

Image above was referred from Tension failure assessment of composite bolted joints under bearing-bypass load interaction using analytical means / Research Gate

 

 

設計にも用いられるbearing/bypass interaction plot

この考えは設計にも用いられます。

その一例がbearing/bypass interaction plotで、横軸にBypassひずみ(試験体であるFRPのひずみ)、縦軸にBearing stressをプロットしたものです。

真ん中はひずみ0であり、負の値である左側が圧縮、右側が引張モードで、それぞれ端にプロットされるのはOHC (open hole compression)とOHT (open hole tensile)、すなわち有孔引張と圧縮のひずみデータとなります。

仮に有孔のFRP試験片にひずみが生じない(bearing/bypass interaction plotの横軸の0を維持できる)状態、すなわちFRPに荷重のかからない状態(bypass loadが0の状態)でBearing loadはどの程度まで上がってくるかを評価できます。

これはBearing stressとなりFRPをボルトなどで締結させる場合の設計指針に活用できます。

設計指針としては穴間の距離、ボルト数等が該当します。

 

圧縮側と引張側どちらも評価できますが、bearing/bypass interaction plotでは引張と圧縮で大きく数値が異なることは少ないため、座屈の恐れのない引張で評価することが多いようです。

 

 

 

ばらつきを考慮した設計許容値を設定

Bearing試験は通常疑似等方やそれに近い積層構成の試験体が評価対象であり、また穴加工やボルト締結等の外的変動要因が入る試験であるため、ばらつきが多い傾向にあります。

このような試験を採用する場合、そのばらつきの一指標であるCV値(変動係数)を考慮し、その上で非破壊確率を考慮した設計許容値であるB値やA値を算出して、実際の設計に活かすことが一般的です。

 

 

CV値を考慮した設計許容値算出法の例

一例をご紹介します。

全体の平均値をx-、非心t分布を基本とした許容限度ファクタをk、全サンプル数をn、正規分布を想定した標本平均の標準化変量をZr、CV値をCVとした場合、許容値は下式で示されます。

CV価を使った設計許容値の算出法

分子は、許容限度ファクターにCV値を掛け合わせてばらつきを考慮したノックダウンさせるべき数値を、全体平均から差し引いたものを意味しています。

分母は標本平均の標準化変量Zrと標準誤差CV/√nを掛け合わせた係数を導入することで、取得されたデータの平均値が真の母集団の平均値よりも高くなるリスクとデータ数nを考慮した振れ幅を考慮し、全体の数値を抑制する(安全側の設計許容値を算出させる)意味合いがあります。

 

今回ご紹介した三次元織物のBearing特性値も上記のような式を用い、非破壊確率を想定したうえで数値設定することが肝要です。

 

許容限度ファクタkについては、過去に連載でも述べたことがあります。

 

※関連連載

「 機械設計 」連載 第二十四回 分散分析モデルによるFRP静的材料データからの設計許容値算出法

 

 

今回は三次元織物を強化繊維とするFRPについて、Bearing特性を中心にご紹介しました。

 

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