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Infusion molding によるFRP製大型風力発電ブレード製作に圧力モニタリングを採用したDirect Infusion (TM)

2026-04-13

再生可能エネルギーの一つに位置づけられる風力発電設備に搭載されるFRP製ブレードの製作について、
圧力モニタリングを実装したInfusion molding技術についての概要と、
技術的ポイントについて述べます。

 

 

COMPOSITE INTECRATIONとは

後述するDirect Infusion (TM)を展開するのはイギリスにあるCOMPOSITE INTECRATIONという企業です。

上記社名のリンクのトップページに記載がありますが、
FRPを中心とする複合材成型(主に型を念頭にしているため成形ではなく成型としています)に関し、
Infusion、RTMなど樹脂未含浸の強化繊維(ドライ繊維)に後から液状の樹脂を含浸させる成型の工程開発と、
それに用いる設備の開発・販売を行う企業のようです。

試作ではなく量産での安定性を重視している企業であり、
プロセスデータを重用する姿勢が明確です。

大型の風力発電ブレードの製作に用いると紹介されているDirect Infusion (TM)も、
この方針に沿って生み出された技術、並びに設備です。

 

今回はCOMPOSITE INTECRATIONが発行した以下の資料を参考に、
Direct Infusion (TM)に関する技術的なポイントを述べたいと思います。

メールアドレスを入力すると資料を入手できます。

※参照情報

Whitepaper BREAKING THE BOTTLENECK / COMPOSITE INTECRATION Industrialising the Manufacture of Large Wind Blades

 

 

風力発電のブレードにはFRPが使われる

昨今は陸上だけでなく洋上でも見かけることも増えた風力発電機。

資料中のFigure 2にもあるように風力発電による発電量は右肩上がりであり、
2024年実績で1100GWを超えています。
わずか10年前まで320GWであることを考えれば急激な増加という表現が合致することに同意いただけるのではないかと思います。

また、2012年頃を境に洋上風力が増加していることも示されています。

 

この設備で回転する大きなブレードは多くがFRP製(+木材)です。

特に近年は大型化が進んでいることから比強度を高める必要があるため、
従来の木材とGFRPだけでなく、CFRPを使うことも増えてきました。

 

風力発電ブレードの作り方

これについてはいくつか分かりやすい動画があり、
以下はその一例になります。

成型方法でいうとインフュージョン成型となります。

この動画を例に工程手順概要を述べます。

    • 1. 型の上に強化繊維であるガラス繊維を積層する
      →アスペクト比の非常に大きい構造材であるため、強度と弾性率の高い連続繊維を用いるのが一般的です。
      積層の手間を省くため、NCFを使うことも多いです。

      ※関連コラム

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    • 2. ブレードの取り付け根本部分の部品をインサートする
    • 3. レーザープロジェクションの指示位置にスパーキャップ(桁の補強板)を取り付ける

      ※関連コラム

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    • 4. 発泡材・バルサ材のコアを積層
    • 5. レーザープロジェクションの指示位置に再度ガラス繊維を積層
      →複数のカットパターンのガラス繊維を積層することで、厚みの変動や3D形状積層を実現します。
      FRPならではの形状追従性を活かした積層コンセプトです。
    • 6. リーディングエッジ(LE)とトレイリングエッジ(TE)にフランジを設置し、翼の上下面の接合用接着剤を塗布
    • 7. 樹脂の通り道となるメディア(メッシュ材等)を積層
    • 8. 積層材全体をバックで覆い、端部をシーリング
    • 9. バック内の積層材全体を減圧する
    • 10. バックの外から差圧でマトリックス樹脂を注入
    • 11. マトリックス樹脂(通常はエポキシ樹脂)を硬化
    • 12. メディアとバックを除去
    • 13. スパーキャップの上にエポキシ接着剤を塗布
    • 14. スパーキャップの上にスパーウェブを接着
    • 15. ダウンコンダクタ(引下導線)をスパーウェブに取り付ける
      →ダウンコンダクタは落雷時の構造部材の破損を抑制するための導線です。
    • 16. 同様の手法で成型された逆側のブレード材と接合
    • 17. 接合部のバリをトリミング
    • 18. スパーキャップ位置を中心とした超音波による非破壊検査
    • 19. LEとTEを補強
    • 20. ボルトジョイントになる根本の仕上げ加工
    • 21. ボルトをインストール
    • 22. 表面処理後に塗装
    • 23. 最終検査実施

思ったよりも工程が多いと感じた方もいらっしゃるかもしれません。

なお、以下の動画は上記の工程の一部を実物で示してくれています。
大型である故、作業も大掛かりです。

 

 

Direct Infusion (TM)の技術的ポイント

今回ご紹介するDirect Infusion (TM)は上記工程のうち、
項目10に該当する技術となります。

バック後、減圧状態になった強化繊維をはじめとした積層材に、
FRPのマトリックス樹脂を流し込む工程です。

マトリックス樹脂と硬化剤は設備のタンクにそれぞれ充填されており、
それがモジュールを通る際に指定割合で混錬され、
1分間あたり200gから30kgまでのレンジで制御したうえで注入できるようです。

Direct Infusion (TM)については、以下のような概要動画もありますので、
前出の参考情報に合わせてこちらの情報も見ていきます。

 

インフュージョン成型で回避したいボイド

資料中で繰り返し述べられているのがFRP中の”ボイドの残留”です。

強化繊維に予めマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグと異なり、
インフュージョン成型ではマトリックス樹脂を”後から”強化繊維に含浸させます。

繊維間という狭い隙間に大気圧との差圧だけで樹脂を含浸させていくのは、
想像以上に難しいです。

しかも、風力発電ブレードは既述の通り洋上風力発電の拡大から大型化しており、
インフュージョン成型のようにインレット位置から樹脂を長い距離移動させつつ、
同時に各領域に樹脂を適正に含浸させることはその難易度を高めることに他なりません。

この含浸の難しさがボイドの発生にもつながります。

 

Direct Infusion (TM)ではバック内の圧力に着目

前出の参考資料のFigure 14に一般的なインフュージョン成型時のバック内の圧力変動が示されています。

圧力は樹脂の注入位置で見ているようです。

これを見るとボイド低減のヒントがあると感じます。

ボイドの発生を回避する一つのアプローチは、

「樹脂含浸前の積層材の減圧は十分か」

です。

当然ながら積層材内に空気が含まれていれば、
それは樹脂含浸時のボイドになるリスクがあります。

まずは十分な時間をかけて減圧することが必要でしょう。

これは資料中には記載がありませんでしたが、
個人的な見解として述べておきます。

 

着眼すべき圧力変動の一つが樹脂含浸後の圧力低下

資料中で着眼すべき圧力変動として述べられていたのは、

「樹脂含浸後の圧力低下」

とのこと。

前出のFigure 14を見ると樹脂含浸が終わると圧力が低下する様子が示されています。

この圧力低下の度合いはマトリックス樹脂の粘度や、
成型品のサイズに依存するようです。

ポイントとしては、

「樹脂含浸後の圧力が下がりすぎるとボイドが増える」

という点にあると記述されています。

 

特に低粘度、小型成型体の場合にその傾向が顕著になるため、
この圧力変動をモニタリングすることの必要性を主張したいものと考えます。

 

マトリックス樹脂は加温、減圧して脱泡する

容量が1000Lのタンクに入れられたマトリックス樹脂は、
35℃に加温され、2mbarに減圧された状態にするとのこと。

これもボイドを防ぐことがその狙いにあり、
樹脂中に含まれる空気を除去、すなわち脱泡しています。

動画中でも樹脂の入るタンクが温水循環のジャケットタンクであることが示されています。

この重要性は前出の参考資料でも繰り返し述べられており、
本文中には以下のような揮発性物質含有割合という定量指標を含めた数値が示されています。

  • Resin from an IBC that has been exposed to air and moisture may have 80 to 90 percent volatile content.

  • A new freshly sealed IBC of resin typically presents 60 to 70 percent.

  • Resin that has been intentionally industrially degassed will typically achieve 10 to 30 percent.

*referenced from “Whitepaper BREAKING THE BOTTLENECK”

室温環境にさらされれば80-90%、開封したばかりでも60-70%の水蒸気を含む揮発性物質を含み、
それが前出の脱泡工程を入れることで当該数値が10-30%に減少すると述べられています。

IBCというのは恐らくIntermediate Bulk Containerというコンテナのことだと思います。

 

大型の風力発電ブレードを含浸させるには複数のタンクをモジュール化し、途切れなく切り替える

これは上記の動画で触れられていますが、
時に4tonを超える大量のマトリックス樹脂を注入しなければならないため、
1000Lのタンクでも十分ではありません。

しかし、タンクを切り替える作業を行うことは、
そのタイミングで気泡が入り込むリスクにもつながるため、
連結した複数のタンクをポンプモジュールで気泡を入れずに切り替えることが可能とのことです。

 

インフュージョン中のプロセスデータを機械学習システムに取り込み自動化を目指す

ここまで述べてきた通り、
ボイド低減に向け様々な工程管理が必要であることは感じていただけたかもしれませんが、
Direct Infusion (TM)で目指すのはこのような管理をできる限り自動化することにあるようです。

将来的に機械学習を実装させたうえで様々な風力発電ブレードのインフュージョン成型を学ばせ、
マトリックス樹脂の注入圧力を含むプロセスパラメータのリアルタイムでの最適化を、
人が関与せずに自動的に行うようにしたいとのこと。

既にデータの活用は始まっているようですが、
機械学習を組み合わせることでより迅速かつ正確にこの手の取り組みを浸透させたい、
という狙いがあるものと感じます。

ユーザのデータを収集し、他のユーザにも活用するネットワーク構築が念頭にあるに違いありません。

そしてこのような取り組みを通じ、量産工程で万が一問題が生じた場合、
原因究明に上記の技術を使いたいと述べられています。

 

上記のような取り組みニーズがあるということは、
現段階でも経験豊富な人の関与が安定したインフュージョン成型には不可欠ということの証左といえます。

 

今回ご紹介した内容を踏まえて考えるべき点について述べます。

 

 

設計的には樹脂未含浸やVfのばらつきを警戒したい

資料中では触れられていませんでしたが、
設計者の目線から言うとボイドもさることながら、

「樹脂未含浸やVfのばらつき」

に注意を払うべきかと思います。

 

樹脂未含浸領域は言ってしまえば複合材料化していないため、
構造材が求められる性能を発現することはあり得ません。

ボイドであれば強化繊維と樹脂が少なくとも”共存”している状態なので、
樹脂にある程度の靭性があれば破壊につながるような大きな問題にはなりません。

しかしある領域にマクロ的な意味でマトリックス樹脂が”居ない”となると、
そこではFRPを含む複合材料で必須の、

「マトリックス樹脂から強化繊維への応力伝達」

ができなくなります。

このような状態では先にマトリックス樹脂に破壊が生じ、
それが他の領域に進展することは避けられません。

風力発電ブレードは回転している間、遠心力がかかり続ける用途であるため、
一度エネルギー開放率の臨界値を超えた破壊が生じればもう止めることはできません。

 

さらに成型体は大型である上、高さ方向にある程度の高低差があります。

重力がかかる以上、樹脂は下に流れがちになるはずで、
樹脂含浸位置に対して高いところにある領域ほどマトリックス樹脂未含浸のリスクが高まるでしょう。

さらに、低い位置は逆に樹脂が多くなるリスクがあり、
結果としてVfが下がることで剛性や強度が狙いより低くなることもあり得ます。

このようなことを念頭にインフュージョン成型時の樹脂の流れ道となる”チャンネル”を意識した、
強化繊維形態の選択も重要となります。

※関連コラム

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インフュージョン成型を考えるにあたり持っておきたい視点です。

 

 

廃棄物の増加にどう対応するか

ここは無視できないでしょう。

再生可能エネルギーというと環境にいいイメージがあるかもしれませんが、
風力発電ブレードの寿命は言うほど長くありません。

レセプタを装着したとしても落雷で破損するリスクはゼロにできず、
また想定以上に強い風で破損することもあります。
接着剤を使っている以上、接合部の健全性も100%とはいきません。

こうして廃棄される風力発電ブレードはその大きさ故に廃棄物としての量も桁違いで、
さらに言えばここ10年で大幅に増加した故、
将来的に今と比較して大量の当該ブレード廃棄物がでることが確実視されています。

ここまで踏まえて、風力発電は本当に環境にやさしいのかを改めて考えるべき段階に来ているのではないでしょうか。

エネルギーインフラは国に任せるという考え方だけでなく、
各個人が少しずつ自分たちの消費するエネルギーの一部を担保する、
といった考えが国の強靭化として最も必要な戦略なのかもしれません。

 

 

今回は圧力に着眼した風力発電ブレードのインフュージョン成型技術のご紹介と、
それに関連する考察を述べました。

ご参考になれば幸いです。

 

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