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FRPが適用されたインドの月探査機と打ち上げロケット

2023-08-07

世界で4か国目となる無人月面着陸を目指すインドが、チャンドラヤーン3号(Chandrayaan-3)を打ち上げました。

8月23か24日には月面への着陸を目指すとの事です。

月面では地質に関する化学的な分析も行う予定で、月に関して新たな知見を獲得できるかもしれません。

 

※参照情報

Chandrayaan-3 sets off for Moon tonight: When will it land?

インドの月探査機「チャンドラヤーン3号」、打ち上げ成功

 

打ち上げの様子は例えば以下のようなニュース動画で見ることができます。

 

打ち上げられた筐体等にもFRPが使われていることが明らかとなっています。

宇宙産業におけるFRP適用に触れた後、概要についてご紹介します。

 

 

宇宙産業でもFRPは使われる

FRPは宇宙産業でも使われることがあります。

一昔前の小惑星探査機”はやぶさ”が搭載していたサンプルを保管したカプセルのヒートシールドにCFRPが使われているのは有名な話です。

大気圏突入時の3000℃に迫る圧縮空気による熱(摩擦熱もあるようですが、高速で圧縮される高圧気体による熱が重要という話を聴いたことがあります)を、シールドであるCFRP自体が熱分解することで中のサンプルを守るという役回りです。

マトリックス樹脂の熱分解で熱に耐えるという考え方は、
一発勝負の宇宙産業ならではかもしれません。

加えてCFRP製ヒートシールドの役回りとして高速気流による”摩耗”に対する耐性もありますが、短期集中の宇宙産業は別として長期耐久性というか点では耐研磨摩耗に対してFRPはあまり向いていないことは加筆しておきます。

 

それ以外にも以下のようなFRP(一部MMC)の宇宙産業適用、または検討事例を紹介したことがあります。

※関連コラム

宇宙産業向け天然素材由来高Tg熱硬化性樹脂のFRPへの適用

バサルト繊維とポリイミドを組み合わせた 超耐熱FRP

月面無人探査機 HAKUTO にも採用されたCFRP

はやぶさ2 に採用されたMMC(Metal Matrix Composites)

 

 

チャンドラヤーン3号に用いられたCFRP

情報の概要としては以下の記事が端的にまとめられています。

Kineco Kaman contributes to India’s third lunar mission

 

打ち上げ機体の構成としては、以下のようなものになっているようです。

・打ち上げ機構

1段目:固体補助ロケット・ブースター2基(Two strap-on rocket boosters)

2段目:ヴィカースエンジン/液体燃料ロケットエンジン2基(Two Vikas engines)

3段目:極低温ロケットエンジン(Powered by a cryogenic engine)

・探査機

着陸船機構+推進機構

 

この情報を踏まえて上記の記事の画像を見てみると、CFRPが用いられているのは以下の4点と書かれています。

Composite equipment bay shroud (ESB) assembly
ITSC closure plates
ITSC, LOX and LH2 wire tunnel and bottom plate assembly
FSA casings with carbon fiber-reinforced polymer (CFRP) elements

位置関係を見てみると、

・3段目の極低温ロケットエンジンのケーシング、底面板

・探査機のケーシング下部

の主に2領域であることがわかります。

 

このうち、Composite equipment bay shroudについては、同じComposite Worldの記事としてもう少し詳細が触れられています。

 

 

Composite equipment bay shroudはCFRP単体ではなく金属とのハイブリット構造

Composite equipment bay shroudについての記事は以下になります。

ISRO/NSIL deploys 36 OneWeb satellites in first commercial LMV-3 rocket launch

 

上記の記事で述べられているComposite equipment bay shroudは直径4m。

Geosynchronous Launch Vehiclesと呼ばれる使い捨ての静止衛星ロケットの精密機器を搭載するのを目的にしているとのことです。

コア材にアルミニウムを採用し、シェルにプリプレグのCFRPを用いてオートクレーブにて一体成形しています。
恐らくアルミニウムはハニカム形状であり、古典的なハニカムサンドイッチ構造と推測します。

Composite equipment bay shroudの拡大画像を見ると金属ファスナー(金属リベットによる締結)が見られます。
また、他の部品との締結部には金属が見えていることから、
これが記事にも書かれているチタンであると考えます。

 

記事から読み取れたのは上記の情報ですが、
どちらかというと保守的な設計思想を踏襲し、
間違いなく構造部材としての役割を果たすことを求められていると感じます。

 

 

 

宇宙産業においてFRPは重量メリットがある故、比較的古くから採用が進みました。

地球の重力を脱し、宇宙空間に飛び出るには筐体が軽いに越したことはないからです。
この辺りの考え方は航空機業界と同じです。

 

加えて冒頭でご紹介したようなシールドとしての役回りを期待されることもあります。
こちらは自己熱分解と断熱性能が求められたといえます。

これは宇宙産業特有の側面もあるとみて良いでしょう。

 

身近な月に関して新たな発見を期待したいと同時に、
不要な軍需技術への転用が進まないことを望むばかりです。

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