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複合材料向け構造/マイクロメカニックモデリング

2023-07-24

シミュレーションの技術はここ数年でさらに大きく進化したと感じます。

その主因として考えているのは、

「計算機器性能と人工知能の向上、そしてオープンソースソフトの拡大」

だと感じています。

 

計算速度の向上はCPUの性能改善によってもたらされたといえるのではないでしょうか。

加えて人工知能は最適解を出すのを得意としていることからも、
シミュレーションとの相性はいいと考えます。

ただし、人工知能のアルゴリズムは不明瞭で算出工程がブラックボックスになりがちであることは大きな課題です。
そして、線形で表現できるような本質を見逃す可能性がある等の限界も知っておくべきだと思います。

またオープンソースソフトもそれなりに増えてきています。

例えばCodeAsterはその一例です。

※参照情報

Code-Aster.JP

 

今日はこのようなシミュレーションにおいて、複合材料向けに構造/マイクロメカニックモデルを用いている、
SwiftCompというものについて触れてみたいと思います。

 

 

SwiftCompの概要

このSwiftCompの概要はこちらのページで見ることができます。

概要については、以下のような動画が公開されており、
イメージをつかむにはいいかもしれません。

 

最大の特徴はFEMと相性のいい構造/マイクロメカニックモデリングを切り分けて行い、融合させること

このソフト最大の特徴は、構造/マイクロメカニックモデリングだと考えます。

より具体的には1mm以上の大きなスケールを構造モデリング、
それ以下のミクロンオーダーをマイクロメカニックモデリングで分けてモデリングし、
その後一般シミュレーションソフト向けのモデルとして合成するというもののようです。

これらのモデリング自体は比較的前からマルチスケールという名称で行われており、
以前もそのようなソフトをご紹介したこともあります。

※関連コラム
MCQ Composites のFRP材料特性評価と検証

上記のような従来法ではマイクロメカニックモデリングを行った後に構造モデリングをしていましたが、
SwiftCompはこれらのモデリングを切り分けて計算を行った上で、
それらをprinciple of minimum information lossという考え方を用いて合成するイメージのようです。

境界条件が無く、ユーザーが任意で評価スケールを決定できるなどの柔軟性もあり、
結果としてモデリングがよりシンプルになり、かつ高速化と正確性を実現したと述べられています。

 

SwiftCompではモデリングの段階で1D、2D、3Dのそれぞれのモデリングを行い、
実際に計算に用いる合成要素としては、梁(はり)、シェル、立体(4面体等)といったものが設定可能です。

 

SwiftCompの具体的なオペレートについては、以下のような動画がありますのでご覧いただくとイメージをつかめるかもしれません。

 

 

SwiftCompの技術の要点は何か

今回公開されている情報だけだと、確かにユーザメリットは多そうですが技術的な要点が見えそうで見えないというのが個人的な感想です。

そこで、どこかポイントになる部分は無いかという観点で資料を見てみました。

SwiftCompに関する概要紹介資料がサイトでアップされています。

ここでの情報が、議論のヒントになるかもしれません。

 

この資料の最後の方に、一般的なCAEソフトの一つであるANSYSとSwiftCompを比較した表があります。

同じような計算を行うのにかかった時間がSwiftCompではANSYSのそれと比べて300分の1であると書かれていますが、私が注目したのは要素形式(Element Type)です。

 

SwiftCompは8-node Quadを採用

FRPのシミュレーションでよく用いられるFEM(有限要素法)を理解するうえで最重要のポイントは、

「要素の各頂点に設置される節点(node)という限られた点の情報(変位など)を関数を用いて要素内の任意の点の情報を算出する」

ということにあります。

つまり、

「節点という飛び飛びの値である離散値に補間関数を用いて連続値に変換する」

ということにあります。

 

SwiftCompの採用している要素形式は8-node Quadとのことで、
四辺形の各辺の中点に節点が存在する形態の事を指しています。

平面の要素でいえば日本語の漢字の「田(た)」です。

この要素形式を採用したことが、
要素数と節点数を減少させることにつながり、
結果として計算速度を高めるという戦略とつながっていると理解できます。

 

予測精度を高めるには節点間の距離を縮めるのが一般的

イメージ的にいうと当たり前ですが、節点間の距離を縮める、つまり

「要素サイズを小さくする=メッシュサイズを小さくする」

ということで計算精度は高くなります。

 

しかし要素サイズが小さい、つまり節点数が多くなればなるほど計算量が増えます。

そういう意味では、SwiftCompが節点数を減らしたことにより計算時間を圧縮したというのは当たり前と言えば当たり前のこと言っているといえます。

 

予測精度を高めるもう一つの方法は高次化

そして予測精度を高めるためのもう一つの方法が、

「高次化」

です。

これは何かというと、

「節点間を1次の直線ではなく2次の曲線で表現する」

とういうものです。

 

しかし高次になるとそれだけパラメータの次数と数が増えることになるため、
やはり計算負荷が大きくなります。

 

 

要素を見ただけでは、計算の高速化と高精度化の両立という点を理解することは困難

上記の通り、節点数を増やすわけでもなく、計算が複雑になるであろう高次化をしたという明確な情報が無い中、どのようにしてSwiftCompの強みが要素によってもたらされたのか私にはよくわかりませんでした。

 

何となくのイメージとしては節点間に新たな節点を置く8-node Quadを設定していることから、

「要素単体が持つ節点を増やすことで、要素サイズを大きくして節点密度を減らしても予測精度が維持することができた」

という事なのかもしれません。

 

そして、当然ながら本システムの売りである構造モデリングとマイクロメカニックのモデリングを分離して行い、
それを融合するという独自技術に秘密があるのだと考えます。

 

 

今回のようなモデリングを含むシミュレーション技術の進化によって、
異方性の強いFRPの予測精度が高まることに加え、
より身近なものとして浸透していくことを期待したいと思います。

 

ただしシミュレーションソフトのユーザ側はそれを何も考えずに鵜呑みにするのではなく、
それぞれの技術の強みと課題を常に客観的にみるという俯瞰的視点が必要なのは言うまでもありません。

 

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