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風力発電ブレードの長寿命化を目指す DURALEDGE project Vol.128

2019-08-27

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FRPのプロが注目する「業界最新ニュース」Vol.128 2019/8/26

(隔週月曜日発行)

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<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━

・「FRP業界最新ニュース」

・お知らせ

・編集後記

 

<今週の「FRP業界最新ニュース」> ━━━━━━━━━━━━━━━━

今週のFRPのプロが注目する「業界最新ニュース」では、

「 風力発電ブレードの長寿命化を目指す DURALEDGE project 」

ということについて述べてみたいと思います。

FRPが比較的古くから用いられてきた業界の一つに「風力発電」があります。

風力発電では、比強度と比剛性の高い素材が強く求められます。

それは、大きな風車で速く回した方が、大きなトルク、
つまり電力を得られるからです。

そのため、風力発電では今から30年以上も前からFRPが積極的に用いられてきており、
近年は自然エネルギーに国を挙げて力を入れる中国がその中心地となっています。

2017年度版の Overview of the global composites market によると、
2016年から2021年にかけ毎年8-9%程度の売上成長が見込まれており、
その世界シェアは中国が売上ベースで半分程度(2015年時点で43%。2021年までには61%まで上昇の予想。)です。

中国は洋上発電も加速させており、ブレードも75m 以上になるなど、
大型の傾向があることからFRP、特に大型ではCFRPのニーズが高まっています。
洋上発電は日本でも検証が進んでおり、メンテナンスインフラ構築や一貫製造の課題がある一方、
海に囲まれているという地の利を生かそうという動きは継続しています。

※参照:中国華能集団が 洋上風力発電 を本格的に開始

その一方で、現在のFRP製ブレードの寿命は30年程度といわれており、
初期段階で作られた風力発電ブレードが次々とその寿命を迎え、
リサイクルや適切な廃棄処理が喫緊の課題となりつつあります。

特に風力発電に主に用いられているGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)のリサイクルは急務です。

※ GFRPに近い将来求められる リサイクル

※ FRP廃棄処理 の現状と必要な姿勢について

 

そんな中、 Technical University of Denmark を主体とするコンソーシアムで、
風力発電ブレードの摩耗による損傷が最初に起こるリーディングエッジ(回転翼の先端)に着目した、

DURALEDGE ( Durable Leading Edges )

というプロジェクトが2018年11月から始まっています。

以下のHPで概要を見ることができます。

http://www.duraledge.dk/

 

このプロジェクトの目的はリーディングエッジの長期利用による損傷メカニズムを解明し、
その損傷を抑制する塗料を開発する、というものです。

プロジェクトの計画は以下のように示されています。

WP1: Understanding the leading edge erosion

WP2: Multiscale computational modelling and numerical simulation of leading edge erosion

WP3: Optimized protective solutions with graded engineered coatings

WP4: Validation for field applications, testing and exploitation

ref: http://www.duraledge.dk/work-plan

第一段階として長期利用によるリーディングエッジの損傷メカニズムを理解する。
第二段階では、上記のメカニズムを予想できるCAEロジックの構築。
第三段階は、上記の損傷を抑制する塗装の開発。
第四段階において、実際のフィールド試験により、損傷抑制の状況の把握と確認。

CAEを使おうというあたりが欧州らしいですね。

恐らく公的資金を投入しているので、先進性(という印象)が無いと申請が通らない、
ということで入れていると考えます。

何故ならば、化学結合の切断(マクロでいうとクラックや破壊)のような劣化に関するシミュレーションは、
機械的な有限要素法とは比較にならないくらい複雑であり、
現段階では現実的でない、と私は考えているからです。

これまでの顧問先や知り合い企業でも、
化学的劣化の状況をアレニウスプロットのような、
極めてシンプルな理論でしか追えておらず、
しかも加速試験をガラス転移温度を考えずに温度設定を行う等、
物理化学ではなく有機化学の知見が不足している状況で苦しみながら予想せざる負えないのが現状です。

長期利用に関する予想に向けてCAEを使うには、有機化学の知見も含めた物性値の導入と、
それによる挙動を実試験に落とし込むという機械系とは異なるアプローチが必要です。
このような指導は弊社の技術サポートでよくあるパターンといってもいいかもしれません。

いずれにしても DURALEDGE プロジェクト最大の狙いは、

「FRP製ブレードの長寿命化とメンテナンスサイクルの長期化」

だと思います。

応力が集中しがちなリーディングエッジは、
様々な応力がかかりがちです。

リーディングエッジが鋭いのは、
鋭ければ鋭いほど空気の翼面からの剥離が押さえられるという、
空力性能の観点から来ています。

この鋭い形状故、回転する際の遠心力、
冷熱サイクルによる繰り返し疲労、
雨などの外的要因による衝撃の際、
応力集中が起こります。

発電効率を上げるためブレードの高回転化も狙いであり、
秒速90m程度まで上げていきたいとのことで、
上記の応力は高まる方向にあります。

このような応力に対しFRPブレードが損傷することを防ぐための塗装ということですが、
詳細についてはほとんど書かれていません。

そのような状況ですが、私の予想として以下のような塗装を狙っているのではないか、
と考えています。

– 線膨張がFRPに近い
→冷熱サイクルによる応力を最小化するのが狙いです。
高分子だけだと難しいので、無機のフィラー等を使うと想像します。

– FRPとの密着性がいい
→これは剥離を最小化するためです。

– 劣化防止・自己修復能力がある
→長期利用において化学結合が切れてしまうのは不可避です。
問題はそのような劣化現象を食い止めることです。
化学結合切断の主な媒体であるラジカルをトラップするもの等が一例です。
また、切れてしまったものを再度修復するという機能も必要でしょう。
コアシェルなどの主体とした修復剤(破壊が起こると中から修復液がでてくる)が一例です。

風力発電はFRPが既に活躍している業界の一つであり、
その業界で求められているのは、

「長持ちすること」

に違いありません。

先日の堤防補強やグラウンドアンカーへのFRP適用に関する以下のコラムでも書きましたが、
FRPの耐腐食性は金属と比較し、高い能力を発現できる領域です。

※ FRPの 堤防補強 部材( Dike Stabilizer )への適用

 

材料費という目の前のコストではなく、
長期利用というトータル寿命を含めたアセスメントをすることで、
本点でアドバンテージの有るFRPが今以上に適切に使われていくと思います。

そして同時にそのFRPの強みをさらに際立たせる今回ご紹介したような塗料やマトリックス樹脂など、
ケミカルの観点からも様々なアプローチが必要となるに違いありません。

 

今後のFRP展開検討の一助になれば幸いです。

 

<お知らせ> ━━━━━━━━━━━━━━━━

今後の登壇予定のセミナーを以下の通りご紹介させていただきます。
合わせて参加をご検討ください。

– 2019年9月18日(水)10:30-16:30

会場:大田区産業プラザ(PiO)(東京・南蒲田)

CFRP部材・製品の 設計と生産に関する 品質保証の考え方とその実践方法

本セミナーは従来の対面に加え、全国にライブ配信するため、
遠方の方にも参加しやすい形態となっています。

https://johokiko.co.jp/seminar_chemical/AC190908.php

※本セミナーには講師割引が適用されます。
ご希望の方は「2019年9月18日のセミナー講師割引希望」の旨、以下の問い合わせページからご一報ください。

お問い合わせ

– 2019年11月28日(木)10:30-16:30

会場:日刊工業新聞社 東京本社 セミナールーム(東京・日本橋)

CFRP/GFRP材料規格(Material Spec)の中身とその作成に必要な材料試験実施法

https://corp.nikkan.co.jp/seminars/view/3109

– 月刊誌「 機械設計 」連載:2019年9月号発売中

2019年9月号の連載では、FRP製品図面についてその概要と、
公差、目視/寸法/非破壊検査、工程規格、材料規格といった、
主要内容についてポイントを解説しています。

※題目 知っているようで知らないFRP製品図面

http://pub.nikkan.co.jp/magazines/detail/00000887

<編集後記> ━━━━━━━━━━━━━━━━

我が家で先日、契約する電力会社を変更しました。

変更先はコープデリでんきです。

元々生協を使っていたのがきっかけではありますが、
一番の決め手は、

「電力を再生可能エネルギーでその多くを賄っている」

というところです。

その取り組みや考え方に共感したことから、
変更を即決しました。

電力小売り自由化が始まってから3年以上経過していましたが、
新規参入の多くは「安くなる」という所。

電気代を下げるのは当然必要なことだと思いますが、
次世代に対して安定的なエネルギーを受け渡すには、
そのような取り組みをしている企業を応援する、
つまり上記の取り組みをする企業にお金が渡るようにする、
ということがより重要だというのが私の考えです。

一種の投資ですね。

今の自分を考えるだけでなく、
次の世代にできることは無いのか。

そのようなことを考えるのも大切な事だと、
再認識した出来事でした。

・ 著書/連載情報━━━━━━━━━━━━━━━━

月刊「機械設計」(日刊工業新聞社)「これからの設計に必須のFRP活用の基礎知識」連載中
http://pub.nikkan.co.jp/magazine_series/detail/0001

『CFRP製品設計の前提知識 ~CFRP業界の特殊性を踏まえた重要ポイント~』
http://www.johokiko.co.jp/ebook/BC170601.php

『CFRP ~製品応用・実用化に向けた技術と実際~』(共著)
http://www.johokiko.co.jp/publishing/BC160301.php

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