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Atom Transfer Radical Polymerization (原子移動ラジカル重合)による金属と高分子複合材料の研究 Vol.126

2019-07-30

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FRPのプロが注目する「業界最新ニュース」Vol.126 2019/7/29

(隔週月曜日発行)

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<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━

・「FRP業界最新ニュース」

・お知らせ

・編集後記

 

<今週の「FRP業界最新ニュース」> ━━━━━━━━━━━━━━━━

今週のFRPのプロが注目する「業界最新ニュース」では、

「 Atom Transfer Radical Polymerization ( 原子移動ラジカル重合 )による金属と高分子複合材料の研究 」

ということについて述べてみたいと思います。

軽くて強いFRP(CFRP含む)を構造部材へ適用しよう。

これは複合材の中でFRPに対して期待される鉄板コンセプトです。

その一方で、構造部材に使おうとすると、
成形加工に苦戦し、材料の価格に驚き、
さらに言うと設計のやり方がわからない、
という状況に陥る企業が多いのも事実です。

そのような中で今FRPに求められている考え方の一つは、

「機能化である」

というのが私の考えです。

一つの方向性としてセンシング、つまり知能化があり、
その技術の一例として先月も光ファイバセンシングについてご紹介しました。

※FRPにも適用できる光ファイバ センシング の最新研究動向

 

今日は少し観点を変え、近年学術業界で注目の集まる、

Atom Transfer Radical Polymerization (原子移動ラジカル重合: ATRP)

の技術を応用した金属と高分子の複合材料についてご紹介したいと思います。

※以下、Atom Transfer Radical Polymerization (原子移動ラジカル重合)を ATRP とします。

まずはATRPについて見ていきます。

ATRPというのは、

「金属錯体を触媒として用いたラジカル重合反応で、制御された高分子を合成することができる」

という画期的な技術です。

日本の高分子権威、京都大学名誉教授の澤本光男先生、
並びに Krzysztof Matyjazeszewski 先生により、
それぞれ独自の方法で1995年に発表された技術です。

重合のメカニズムですが、
ハロゲンが末端にある有機物と金属錯体を一緒に反応させることで、
ラジカルが発生します。
この反応により金属錯体の金属は酸化されます。

このラジカルが高分子の原料であるモノマーをアタックし活性モノマーができるという開始反応が第一段階。

発生した活性モノマーは他のモノマーにアタックしてオリゴマーを経て高分子化し、
樹脂やゴムになっていきます。

ポイントは Termination と呼ばれる活性のオリゴマー同士が反応することによる失活。

ここを金属錯体や高分子の選択によって最小化する、
つまり低分子であるモノマーが連なる高分子化反応と、
オリゴマー等が失活する失活反応速度の比を検証し、
優先的に高分子化反応を進めることで、
想定する、つまり設計通りの高分子を得ることが可能になるとのことです。

この辺りは以下のような資料が参考になると思います。

精密ラジカル重合ガイドブック
https://www.sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/countries/japan/materialscience/documents/saj1455_crpg_j.pdf

ウィキペディアには原子移動ラジカル重合は「リビングラジカル重合法の一種である」と書かれており、
上記の通り正確にはリビングライクの重合反応であるかもしれませんが、

「制御された重合反応」

という表現がより正しいと学術業界では考えられているようです。

ご興味ある方は以下の動画を見るとこの点の議論がなされていることがわかります。

https://www.youtube.com/watch?v=sMvjCzjEILE

上記でご紹介したATRPによる金属と高分子複合材料の研究の一例となる文献は以下のようなものです。

Solution processable liquid metal nanodroplets by surface-initiated atom transfer radical polymerization
Jiajun Yan et al, Nature Nanotechnologyvolume 14, pages684-690 (2019)
https://www.nature.com/articles/s41565-019-0454-6

内容としては、室温で液体であるガリウムとインジウムの共晶合金を、
マイクロドロップレットの状態で有機物溶液に滴下し、
重合反応を進めることで、
内側に金属、外側に高分子というコアシェル構造を作る、
というのが大きな目的です。

高分子側の溶液はラジカル反応の基本的な原料である、
メタクリレートを使っています。

※実際に使用している高分子の原料
poly(methyl methacrylate) (PMMA)
poly(n-butyl acrylate) (PBMA)
poly(2-dimethylamino)ethyl methacrylate) (PDMAEMA)
poly(n-butyl acrylate-block-methyl methacrylate) (PBA-b-PMMA)

ATRPにより、重量ベースで50wt%の高分子をシェルとして成長させることが可能とのこと。

できる材料の外観イメージは以下のサイトのトップページを見るとわかるかもしれません。

https://www.cmu.edu/mcs/news-events/2019/0523_liquid-metal-elastomers.html

 

今回の技術は様々な高分子と金属錯体の組み合わせで設計可能であるため、
オーダーメイド化が可能という強みがあります。

詳細は書かれていませんが、

soft robotics、artificial skin、bio-compatible medical devices、

といった用途が既に検討されているようで、
複合材料が医療に適用される新たな一歩になる可能性もあります。

もちろん金属と組み合わせ、さらにその形態制御がナノレベルであるため、
量子の世界の特性が発現する、
また電気的特性を発現するという可能性もあるでしょう。

今回ご紹介した内容で考えるべきことは、

「FRPの機能化を考える場合、マトリックス樹脂や繊維、
関連する材料の化学的性質を理解しながら設計する必要がある」

ということです。

機械的観点だけでなく、化学的観点が必要になってきます。

さらに言うと、有機物だけでなく今回登場した金属錯体のような有機金属や、
金属やセラミックなどの無機物と有機物の組み合わせ、
という新たな材料選定の考え方も必要でしょう。

今後のFRP機能化においては学術的な部部にも視野を広げながら、
しかしできる限りシンプルに物事を考える。

そのような戦略的視点が必要になっていくものと考えます。

 

<お知らせ> ━━━━━━━━━━━━━━━━

今後の登壇予定のセミナーを以下の通りご紹介させていただきます。
合わせて参加をご検討ください。

– 2019年9月18日(水)10:30-16:30

会場:大田区産業プラザ(PiO)(東京・南蒲田)

CFRP部材・製品の 設計と生産に関する 品質保証の考え方とその実践方法

本セミナーは従来の対面に加え、全国にライブ配信するため、
遠方の方にも参加しやすい形態となっています。

https://johokiko.co.jp/seminar_chemical/AC190908.php

※本セミナーには講師割引が適用されます。
ご希望の方は「2019年9月18日のセミナー講師割引希望」の旨、問い合わせページからご一報ください。

 

– 月刊誌「 機械設計 」連載:2019年8月号発売中

2019年7月号が発売され、第7回目の連載記事が掲載されています。
ご興味ある方は購入をご検討ください。
今回はFRP製品製作プロセスの概要紹介とポイントとなる積層工程について、
技術紹介とその比較を行っています。

※題目 FRP製品製作プロセスでは成形加工ではなく積層に着目する

http://pub.nikkan.co.jp/magazines/detail/00000881

 

<編集後記> ━━━━━━━━━━━━━━━━

先週はとある異業種の講演会に聴講者として参加するため、
久々に母校の大学に行ってきました。

かなり時間が経っていることもあり、
大分変ったなというところと、
そうは言いつつ大部分はあまり変化が無いと感じました。

講演会の後の交流会も参加し、
ほろ酔い状態での帰り道に駅の近くの蕎麦屋を発見。

気になっていましたが一度も行ったことのないお店だったので、
思い切って入ってみました。

結論から言うと、とても美味しかったです。

冷やしを食べたのですが、出汁のきいたつゆと、
コシのある麺を前に、一人で美味しいとつぶやいていました。

すると、奥の座敷から大学生、大学院生、卒業生と思われる方々の会話が聞こえてきました。

話題は「社会人と学生は全然違うんだ」という”あるある”の話題であり、
懐かしさを覚えました。

議題が組織論(会社で必要な処世術は何か 等)に終始するのは少し寂しさを感じたという「余計なお世話的」な感想を持ちながらも
楽しそうに学生と会話する方々は微笑ましかったです。

・ 著書/連載情報━━━━━━━━━━━━━━━━

月刊「機械設計」(日刊工業新聞社)「これからの設計に必須のFRP活用の基礎知識」連載中
http://pub.nikkan.co.jp/magazine_series/detail/0001

『CFRP製品設計の前提知識 ?CFRP業界の特殊性を踏まえた重要ポイント?』
http://www.johokiko.co.jp/ebook/BC170601.php

『CFRP ?製品応用・実用化に向けた技術と実際?』(共著)
http://www.johokiko.co.jp/publishing/BC160301.php

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