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Toray が高柔軟性の新規 PPS を発表 Vol.118

2019-04-09

 Chemical structure of PPS polyphenylenesulfide

( The chemical structure was drawn by FRP Consultant )

 

今週のFRPのプロが注目する「業界最新ニュース」では、

「 Toray が高柔軟性の新規 PPS を発表 」

ということについて述べてみたいと思います。

 

Toray が柔軟性の高い新規のPPSを発表

TorayのグローバルHPで見つけましたが、
極めて柔軟性の高い新規の PPS( Polyphenylenesulfide )をリリースしたとのことです。

PPS の構造式は本コラムの冒頭に示しました。

 

以下のページで内容を見ることができます。

https://www.toray.com/news/chemicals/detail.html?key=83840EED0EA3EC2A492583CB00079898

本日公開した当社のコラムでも述べたように、
最近、PPSも含まれるスーパーエンプラのFRPがますます身近になりつつあります。

※参考記事
JEC Paris innovation award 2019 から見る業界動向
http://ur0.link/xWRe

熱可塑性樹脂に柔軟性を持たせたい。

 

このような要望は形状追従性や耐衝撃性の向上を目的に比較的多いと思います。

 

その一方で、

「耐熱性は維持したい」

というのがユーザーの本音。

このような化学的にみて両立不可能といわれた難題に、
nanoalloy(R)という技術で実現したというのが今回のリリースの内容となります。

 

リリースされた PPS の特性は

PPSの耐熱性はもちろん、
耐薬品性も維持しながら、
弾性率を1200MPaに設定できたとのこと。

一般的なゴムの弾性率は3000MPa程度ですので、
ゴムとほぼ同等というイメージで間違いありません。

有機化学の知見のある方だとイメージできるかと思いますが、
これはかなりすごいことです。

熱可塑性樹脂は耐熱性が劣るのが一般的ですが、
その耐熱性を実現する際に大きな役割を果たすのが、

「三次元架橋構造による剛直な分子構造」

である、というのが有機化学では常識です。

柔軟性があるということは、架橋点間の距離が長く一般的には耐熱性は低下します。

しかし、今回は架橋点どころか、基本が架橋点を有さない熱可塑性樹脂です。

それにも関わらず、耐熱性を維持し、かつ耐薬品性等も大きく変化しない、
というのは信じがたい部分さえあります。

 

参考までにですが、
熱可塑性樹脂の耐熱性を持たせるために剛直化したいという場合、良く用いる分子設計思想が、
芳香族、いわゆるベンゼン環を構造の中に取り入れる、
というもの。PPSもベンゼン環が入っていますね。

 

尚、上記の熱硬化、熱可塑のの違いについては、
連載中の「月刊 機械設計5月号(2019)」で述べていますので、
そちらも合わせてご覧ください。

http://pub.nikkan.co.jp/magazines/detail/00000863#index

 

今回リリースされた製品のポイントはやはり、

「分子構造の設計」

を行ったということでしょう。

nanoalloy(R)という技術を用いて分子構造を最適化した、
と書かれていますがその技術の名称からもわかるように、
アロイ構造にしたものと考えられます。

恐らくですが、PPSにゴム弾性を与える一方、
耐熱性を維持するような高分子を組み合わせ、
それを均一にナノスケールでアロイとして分散させながら、
最適な海島構造を設定したと考えられます。
(もしかすると、海島ではないのかもしれません)

この辺りは化学の専門企業の力量が発揮されているものと考えます。

用途としては主に自動車で、
複雑形状追従と易成形性をフルに生かし、
パイプ製品等に用いる、というのがアプリケーションの一例として述べられています。

このような柔軟性と耐熱性を有する高分子は、
FRPの業界でも活用できる可能性があります。

例えば有機繊維と今回のPPSを組み合わせれば、
その柔軟性を維持しながらも、強度を高めるということは可能です。

それ以外にもPPSの耐薬品性の高さを応用し、
コーティング剤としてFRPと組み合わせるという考えもあります。
溶媒や化学品と接触する面にPPSを適用するのです。
(塩化メチレンやトルエンなどの一部薬品に対してはPPSの耐性が劣ることについては注意が必要です)

一般的な熱可塑と違い、柔軟性があるので、
シート状にしてライナーのように貼り付けるということも考えられます。

ずば抜けた耐薬品性を有するフッ素系のものと比較しても、
異種材との密着は圧倒的にやりやすくなるというメリットがあると期待されます。

いずれにしても熱可塑性樹脂の基本特性を維持しながら、
ゴム弾性クラスの高分子を開発したというのは非常に興味深いです。

今後は他の熱可塑性樹脂に対しても似たようなアプローチが出てくるかもしれません。

 

FRPの使い勝手向上と適用範囲拡大に向けた動きに活用できる可能性のある新規材料から、
今後も目が離せません。

 

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