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CFRPをボディーに用いた Polestar 1

2018-02-15

昨年( 2017年 )の10月に上海で発表された Polestar 1。
自動車に関する関心が高いFRP業界でも話題になっているため、
知っている方も多いかもしれません。

 
( The image above is referred from https://www.polestar.com/polestar-1/ )

今日はこの記事を参考にCFRPの自動車適用というものについて考えてみたいと思います。

 

Polestar 1 とは

Polestar というのは Volvo のモータースポーツパートナーとのことです。
以下に日本語でもサイトがあります。

https://www.volvocars.com/jp/buy/highlights/polestar


Polestar 1 というのは発表されたPHV市販車第一号とのこと。

新車発表の様子は以下の Youtube で公開されています。
実際のプレスリリースですので分かりやすい発表です。


上記の発表内容について日本語で最もわかりやすくまとめているのは以下のサイトだと思います。

http://jp.autoblog.com/2017/10/19/polestar-1-first-look-600-hp-hybrid/


上記のURLの記事は私が実際に Polestar のリリースをYoutubeで聴いた内容と相違ありませんでしたので参考になると思います。

上記の記事にCFRP関連以外で追加するとすると以下のような内容もあると思います。

– 後輪をプラネタリーギアを通じて個別にトルク制御するため、高速性能と操作性を向上

– モーターのみで150kmの走行が可能だが、これは一般的な自動車ユーザーが一日に走る距離の2倍に相当

– バッテリーはモーターを動かすものに加え、補助的なバッテリーも追加。この追加バッテリーの役割は冷却、制御といった動力として使用するとのこと。
(バッテリーの重量増加分はCFRP適用によりキャンセル:詳細後述)

– 内装の操作盤はタッチパネル方式。豪華さを出すためにCFRPも使用。

– 高速走行時はリアスポイラーが立ち上がり、ダウンフォースを得られる

– Polestar 1 は中国・成都に設立された専用工場で組み立てられるが、この工場はデザインもこだわっており、自然との融合や顧客との距離を近くすることを重視。デザイナーやエンジニアが顧客と見える距離にいることが大切とのこと。

– 車はスマートフォンでの起動が可能

– 2019年に販売予定の Polestar 2 は完全な電気自動車で、より一般的な顧客に購入してもらうことを想定したコンセプト。2021年に発売予定の Polestar 3 は空力性能を突き詰めたスポーツカーになる可能性が示された。

– 近い将来(5から10年後)、大気汚染が今以上に深刻になる以上、自動車の電動化の流れは必須であり、世界が大きく変わると予想しているとのこと。

 

Polestar 1 における CFRP 適用

一言でいうとなかなか思い切って広い範囲で使ったな、と思いました。


上記のプレスリリースで述べられていたCFRP適用の動機は3点あるとのこと。

1. 230kgの軽量化

2. ねじり剛性の45%向上

3. 重心低下による操作性向上


まず述べられていたのが後部座席のルームフロアパネルの「 Dragon fly 」と呼ばれる部分の補強。
綾織りのCFRPをかぶせることで部分補強を行っています。
この部分補強により該当部分の剛性は60%向上したと述べられています。

部分補強を行う部品として選定した理由としては、該箇所が車体全体の剛性を高めるために極めて重要な部分であるためとのこと。

ホイールベースを短く設定しているというのも関係するのかもしれません。

これにより車体のねじり剛性が大きく向上したようです。


またピラーについては中空のCFの組紐(と思われるもの:ブレーディング)の基材を用い、
それを後から樹脂含侵するRTMで成形していると予想されるものでした。

イメージ画像によると中空構造の内側に別の材料(発泡材?)が入っていますが詳細は述べられていません。

これによりピラーの剛性が高まった結果、天井や窓を広くとる設定ができたそうです。
視覚性や居住性が高まるだけでなく、デザインの自由度が高まったと述べられていました。


その一方でフロアやシャシーには基本的に金属を用いることで重心が低く設定されているとのこと。

自動車の操作性を高めるために低重心するというのは定石ですね。

これ以外にもドア、ボンネット、天井、ラゲージドアなど、
ほとんどの部品がCFRP製になっているようです。


結果として車両の全体重量は230kg低減され、
先述した追加のバッテリー重量をキャンセルした一方、
車の重心が下がり走行性能や操作性が高まった、
というのが大まかな流れです。

 

自動車の電動化に向かってのFRPの立ち位置

今回の Polestar 1 の発表は色々と考えさせられるものがあります。

当然ながらまだ半分コンセプト車のようなイメージであるためCFRPをかなり使っているという理解は間違いありません。

しかしながらFRPを使うことによって恩恵のある軽量化でバッテリー積載量が上がるうえ、
剛性の向上と低重心下を進めたというコンセプトはFRPが自動車の電動化に向かうにあたっての一つの流れとみることはできると思います。


なんとなく軽く、ではなく軽量化+αのコンセプトがきちんと入れ込まれていることを忘れてはいけません。


しかしながらこの流れをそのまま正解としてしまうのもまた違うと思います。


どちらかというと上記の+αの考え方は昨今のFRP業界でいえば常識。


Polestarはその先を見ていることを忘れてはいけません。


上記の発表内容をうのみにし、CFRPを使うことを目指したうえ、

「CFRPは高価なので使えない」

という典型的な後追い姿勢では労力とお金の無駄遣いになります。

 

より高い目線で、そして自社技術の強みを主軸に置きながらどのようなコンセプトを立案できるのか。

そのような姿勢が今まで以上に求められています。

 

さらに今回の発表は欧州の企業(技術)を買収している中国企業の飛躍を示した一例といえます。

巨大マーケットと資金、そして何より向上心の強い隣国中国の成長は、
積極的な日本企業にとって重要なビジネスパートナーである一方、
旧態依然とした体制から抜け出せない日本企業にとって脅威といえます。


今までのやり方、体制を含めた成功事例にしがみつくことなく、
隣国と協業や競合をしながらどのように生き残り、そして成長していくのか。


異次元の危機感というものが自動車業界に限らず日本企業全体に求められているのかもしれません。

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