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自動車向け GF/PP の連続繊維/射出成形ハイブリット部品の拡大と今後の課題

2017-10-31

熱可塑性樹脂( thermoplastics )とガラス繊維( Glass fiber / GF )のFRP材料サプライヤとして確固たる地位を確立してきている LANXESS 。
2012年に Bond-Laminates GmbH を取得し、自社の熱可塑性樹脂製品と組み合わせ、
着実に実績を積み重ねてきており、日本車の一部にも既に搭載され始めています。


そのLANXESSがSUVの front end に採用されたという、
連続繊維 GF/PP ( polypropylene : ポリプロピレン )と射出成形による成形体のリリースを参考に、
FRP業界での一つの流れについてみていきたいと思います。

 

GF/PP front end が適用される Volkswagen Atlas

Volkswagen Atlasというのはまだ日本では発売されていないようですが、
以下のHPで概要を見ることができます。

http://www.vw.com/models/atlas/


外観写真は以下のようになります。

( The image above is referred from https://www.autoblog.com/photos/2018-volkswagen-atlas-first-drive/ )


もともとは「 トラモント 」という名前だったものが「 アトラス 」に変更されたようです。
この辺りは以下のような自動車に詳しい方のHPをご覧になるのが良いと思います。

http://car-moby.jp/95481


V6、3.6Lのエンジンで3列シートにもなるとのことで、
大型のSUVであることは間違いないようです。

 

GF/PP front end の概要

LANXESSのプレスリリースは以下のURLで見ることができます。

https://lanxess.com/en/corporate/media/press-releases/trade-technical/2017-00081e/


上記のURLに写真も載っていますので見てもらえればと思いますが、
多くが連続繊維のGF/PPで構成されている一方、
金属部品のインサートが必要な部分や複雑な形状の部分については、
射出成形で成形されていると書かれています。

数年前からはやり出したオーバーインジェクションです。


熱可塑性樹脂を好む欧州が発信のこの技術は、
着実に広がりを見せつつあると感じます。

射出成形に用いられる樹脂は「 Z struts 」と書かれていることから、
層間方向にも配向している短繊維が入った材料であると考えます。


1mm厚みの Tepex dynalite 104-RG600 というガラスロービングのPPマトリックス材料で大まかな形状を作り、その上から140℃で射出成形をする、とうのが大まかな流れです。


工程はどうしても複雑になりがちですが、
熱可塑性樹脂成型では最強の量産性を誇る射出成形で仕上げの形状を作ることが最大の強みといえます。


加えて今回の素材もガラス繊維とPPということで価格も押さえやすいということも忘れてはいけません。


結果として鉄ベースの同部品と比べ50%の重量減少を達成したと上記プレスリリースには書かれています。

 

Tepex dynalite 104-RG600 という材料


ここで少しTepex dynalite 104-RG600という材料についてみてみます。

基本データは以下の所で見ることができます。

http://bond-laminates.com/uploads/tx_lxsmatrix/mds_104-rg600_x_-47_.pdf


ほとんどデータは載っていませんが、
ガラス繊維は1200tex、マトリックスはPP、比重は1.68、Vfは47%、単層厚みが0.5mmと書かれています。


引張特性については弾性率が20.5 GPa、強度は400 MPa。

熱硬化性のCFRPと比較すると6分の1以下ですが、
PP単体の物性と比較すれば強度が10倍、弾性率は20倍になっており、
複合材料としての機能性はきちんと発現できています。


熱可塑と炭素繊維( Carbon fiber / CF )との組み合わせはサイジング材含め、
まだまだ改善や検証の余地は多いようですが、
GFは素材そのものに加え熱可塑と古くから組合されてきた背景もあり、
熱可塑性樹脂との相性が基本的に良いというのも強みです。


このデータシートにはプロセスに関する話もかかれています。

要点だけ抜粋してみます。

  • 保管については安定のため特に制限が無い
  • 予備加熱は190から210℃(マトリックス樹脂の融点よりも20から40℃)のレンジで時間は厚みによる。マトリックス樹脂の酸化分解を防ぐため、加熱時間は短いことが望まれる。加熱方法としては中赤外が好ましい。接触式の予備加熱の場合は繊維の配向ずれを防ぐため、離型フィルムを挟む必要あり。
  • 予備加熱した材料の運搬は2、3秒以内に行う(冷めると硬くなる/縮むため)。搬送は樹脂のくっつき、繊維の配向ずれの恐れがあるため、手搬送は推奨しない。
  • プレススピードは50mm/s、型閉じスピードは5mm/s。
  • 5から100気圧(約0.5から10MPa)の圧力で110℃以下になるまで含浸と冷却を行う。一例として2.0mmの材料の場合はおよそ30秒で該当する冷却条件に到達する。

熱可塑もこのような気を遣うとなると実はデメリットも出始めます。
熱硬化は金型温度が常に一定でいいのでプロセス性が良く、熱可塑のように加熱冷却を繰り返す場合、
設備にも負担がかかります(そのため熱可塑でも中温度一定にするプロセス設計をしているメーカもいます)。


尚、この材料は-10℃から90℃という温度で使えるとのこと。

とはいえ、どのくらいの温度環境、荷重条件下で使われるかによって、
この温度条件が変化することは言うまでもありません。

 

FRP業界におけるGFRTP関連について考えるべきこと

今回の記事から何を考えるべきでしょうか。


やはり業界的にも堅調な自動車業界をターゲットの一つにするというのは戦略としては外せないのは事実です。


自動車は製造業の中では販売数がある程度大きい一方、
販売単価も高いため第二次産業の中では比較的利益率の高い産業の一つです。


その一方で魅力的故、日本、ドイツ、アメリカという3大国が世界中でしのぎを削っており、
そこにEVシフトという新たな流れを中国、フランス、イギリス主導で始めるなど、
大転換期の様相を呈しています。

そうするとエンジンからモータへの変化、航続距離を延長するために必須の軽量化といった要望を背景に今までの常識で成り立ってきた設計思想も大幅な見直しを迫られ、今まで以上にFRPが使われるという可能性も十分に考えられます。


この時のポイントとなるのは生産性もそうですが、素材価格と安定品質のバランスが極めて重要になってきます。


いかに短時間で大量のものを作るのか、というのは検討事項としては素材価格と安定品質バランスという事項の後です。


素材価格が抑えられればいいのは事実。


それゆえ、大量に作る自動車系は現段階ではGFが強化繊維としては主体となると考えます。
合わせて射出成形という大量生産技術を適用できる熱可塑性樹脂、
特に自動車でも実績の多いPPがやはり本命と見るべきです。

もちろん、将来は別としてあくまで現段階ではという意味です。


このとき価格ばかりが注目され、材料の安定品質が置き去りになるケースが後を絶ちません。


昔から実績のあるGFRTPとはいえ、
繊維の長繊維化や場合によっては連続繊維へと変化している今、
使用用途はアクセサリーではなく場合によっては構造部材へと変化しています。


状況がこれだけ変わってきている以上、材料もそのまま納入します、
というわけにはいかず、材料規格などの定量要件を定めて常にモニタリングする必要があります。
これは材料メーカだけではなく受け入れる側にも必須の姿勢です。


大変残念ながら上記の必要性を理解はしてもらえるものの実行に移せない企業は思ったよりも多く、
多かれ少なかれ将来的な問題につながるだけでなく、
一度問題が起こった後にその問題の究明と解決に多大な時間を要することになる、
ということが目に見えています。


わかっているリスク故、予め対応のやり方がいくらでもあるのですが、
本点に関する危機感の足りなさが産業界全体としての問題の根幹であると考えます。


これは自動車業界に限らず、また日本に限らず全世界の第二次産業共通の課題といえます。


もちろん安定品質のために様々な要件設定や評価を行えば価格やコストは上がる方向に行くでしょう。


とはいえ、今後控えるリスクを考えればここは投資と割り切って価格と品質安定のバランスを取る、
という考え方が必須だと思います。


ある程度の期間きちんと維持管理し、現実を理解すればより効率的、効果的なやり方へと改善していくことも可能です。


しかし、実績が無いまま効率を追い求めるのは絶対に間違いです。


この辺りの考え方は現場に近い方だけではなく、
どちらかというとトップマネジメントの方々に一度聴いていただきたい内容と考え、
2018年1月にエグゼクティヴ向け特別講演を企画しています。


今後のFRP業界発展に向けた極めて重要なアプローチと考えています。

 

 

いい意味でFRP業界も過渡期にあると思います。


この過渡期をFRP業界として乗り越え、第二次産業の一役を担う産業へと昇格できるためにも様々な企業が力を合わせる必要があると思います。

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