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はじめてのFRP FRPの 熱伝導率

2017-10-10

今日の はじめてのFRP ではFRPの 熱伝導率 について書いてみたいと思います。


軽量、高強度が最大の売りのFRPですが、少し見方を変えて物理特性に着目することで様々な特性が見えてきます。

熱伝導率 はその特性の一つといえます。

熱伝導率 のイメージを少し具体的な数値も参考に見た後、FRPの熱伝導率向上に関する最新の取り組みについてご紹介します。

 

熱伝導率が重要な電気系統

エネルギーや動力系統のシンプル化による住宅、オフィス、自動車の電動化の推進、
従来の電気系インフラの耐腐食性向上や軽量化のニーズの高まりから、
FRPに対する該業界へのアプリケーション拡大が期待されています。


絶縁性を有しながら軽量であることから、例えばセラミックスからの代替も検討されているとのこと。
靭性が極めて低いセラミックスよりもFRPの方がメリットがでるという選択肢もあるようです。


しかし、ここでFRP最大の課題ともいえるのが熱伝導率です。


熱伝導率が低いことにより各種電動効率を上げられるケースもありますが、
温度をある一定以上にはできない環境、例えば集積回路のように熱による導体の電気抵抗増加、
熱そのものによる発煙や発火などは最悪の事態の一つです。


金属のような導体は例えば温度が0℃から300℃に上がることで、
以下のように変化します。

※以下の値は0℃(左)、300℃(右)の体積抵抗率(単位:10-8 Ωm )を示しています。

Zn:    5.5    13
Al:    2.5    5.9
Au:    2.05    4.63
Ag:    1.47    3.34
Fe:    8.9    31.5
Cu:    1.55    3.6
Ni:    6.2    22.5
Ir:    4.7    10.8
In:    8.0    36.7

(出展:理科年表 平成29年度版
 


温度の上昇により分子運動が盛んとなり、
上記のような金属の電気伝導媒体である自由電子の運動が妨げられるのが主因であることは公知のことだと思います。


尚、ここでは詳しくは述べませんが半導体は温度が上がるほど電気抵抗が小さくなる性質があります。
これは電子を余分に持ったn型(SiにPなどのドナーを添加)と電子の足りないp型(SiにBなどのアクセプターを添加)を組み合わせているため、
温度上昇によりエネルギーバンドを乗り越える電子が増えることが主因とのこと。

半導体については例えば以下のようなサイトは参考になるかもしれません。

http://www.hitachi-hightech.com/jp/products/device/semiconductor/properties.html

 

以上のような理由から、材料の熱伝導率が重要であることは電気業界では一般的な話題となっています。

 

FRPの熱伝導率

熱伝導率はkとしてあらわされることが多く、
厚さ1mの板の両面に1Kの温度差があるとき、
その板の面積1m2を通じて1秒間に流れる熱量のことを表します。
(上記の説明出展:理科年表 平成29年度版


まずは参考までに金属の熱伝導率(@ 0℃)を示します。
熱伝導率の単位は W/mK です。

Al:236
Au:319
Ag:428
Cu:403


(出展:理科年表 平成29年度版
 

概ね三桁です。
やはり金属ですので1秒間に流れる熱量としてはかなり大きい印象です。


では同じようにFRPの熱伝導率を調べてみると以下のようになります。
単位は W/mK です。

T300/epoxy(Vf60): 0.59
M55J/epoxy (Vf60): 1.1
Kevlar49/DX210(Vf57.8-67.6):0.405-0.41
S-glass/epoxy (Vf不明): 0.5

(出展:複合材料活用辞典)


上記を見るとFRPはほぼ断熱体であることがわかります。


尚、同じような熱伝導率を示すものとして以下のような材料(抜粋)があります。
単位は W/mK です

雲母:0.55-0.79
ガラス(ソーダ、鉛、パイレックス):0.55-1.1
コンクリート:1
漆喰:0.8
石英ガラス:1.4
耐火煉瓦:1.1
ナイロン: 0.27
ポリエチレン: 0.25-0.34


上記のどれもあまり熱を積極的に伝えるイメージはありません。

そういう意味でもFRPは断熱材としての性質が強いということを感じていただけたかもしれません。


いずれにしてもFRPには上記のような熱伝導率を有しているのだ、
というイメージを持っておくだけでも材料選定の際の参考になると思います。

 

FRPの熱伝導率を高める近年の取り組み

FRPに対して直接、というわけではありませんがグラフェンを用いた熱伝導率向上に関する技術発表が数日前に以下のような記事として発表されています。

「h―BN樹脂複合材の熱伝導改善 KRI、酸化グラフェンで表面改質」
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00445815

KRIという企業は大阪ガスの出資による研究受託機関です。企業のHPは以下の所にあります。

http://www.kri-inc.jp/index.html


上記の記事には六方晶窒化ホウ素(h―BN)を含む樹脂複合材の熱伝導性の大幅改善に成功、
と書かれていましたのでFRPを想定したものと考えます。

グラフェンについては強靭化などを目的に検討されている、
というお話は以下の記事でも述べたことがあります。

FRP学術業界動向 – Graphene の FRP への活用

 

極端なアスペクト比と原子レベルに近い形態の特殊性から今も検討と検証が進められており、
必ずと言っていいほど業界の展示会にグラフェンサプライヤの姿を見つけることができます。

また上記の記事によるとグラフェンと類似構造を有する六方晶窒化ホウ素の表面に、
酸化グラフェンが存在するようにしエポキシとの接着性を大幅に向上させたことで一体化に成功した、
というのが趣旨。

この六方晶窒化ホウ素によりエポキシ複合材(強化媒体、Vfなど不明)の熱伝導率が 7.4 W/mK まで上昇したとのこと。
最適化すれば 10 W/mK を超えると述べられています。


仮に上記の記事で検証されていたものが CFRP( CF/epoxy Vf 60)とした場合、
熱伝導率は10倍以上向上したことになります。

 

 

いかがでしたでしょうか。


今回の記事は一例ですが、FRPの物理特性を大幅に改善することで新たな機能性を持たせるための好例だと考えます。


熱伝導率はCAEにおいても heat transfer の計算にも必要な考え方であり、
構造部材の設計でも必須のパラメータの一つといえます。

FRPの物理特性の一つである熱伝導率。

熱の移動が重要と考えられる方にとってご参考になれば幸いです。

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