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Tencate の高靭性材料 TC380 について

2017-08-26

今日のコラムでは Tencate が発表した高靭性材料 TC380 エポキシレジンシステム について簡単にご紹介したいと思います。

 

Tencateが発表した高靭性材料 TC380


TencateのHPにおいて、以下のURLにてTC380については見ることができます。

https://www.tencatecomposites.com/product-explorer/products//sbY3/TC380

TC380 というのはマトリックスの名称であり、ここで紹介するCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の強化繊維として適用されているのは後述するIM7という炭素繊維です。尚、材料はプリプレグ(繊維に樹脂が含浸してある中間材料)の形態のようです。


該マトリックス樹脂は開口引張や圧縮、衝撃後圧縮試験、Mode I、IIのエネルギ開放率が優れている、
と書かれています(CFRPとしての特性です)。


材料の特徴としては以下のことが書かれています。

– オートクレーブを用いる必要が無い(バギングで成形可能)

– 低吸水性とそれによる高温高湿での高物性

– 室温暴露で30日間のライフを有する(タックライフ:貼り付けができるライフは21日間)

 

この中でオートクレーブを用いる必要が無いということについて推奨する成形プログラムを見てみます。


カタログには推奨成形硬化プロセスとしてAとBが述べられていますが、
代表としてAについて画像を抜粋します。

( The image above is referred from http://www.tencate.com/emea/Images/prodcomp_28-45749_TC380_DS_051817_NEW_Web.pdf )

 

上記の大まかな成形工程とプロファイルを見た時、どのような印象を持たれましたでしょうか。


私個人的には、


「なかなか取り扱いに注意が必要な材料だ」


という印象を直感として持ちました。


二段階の加熱が必要で、さらに昇温速度も極めてゆっくりです。

これはマトリックス樹脂の硬化システムが非常にシビアに設計されていることを示唆しており、
成形時にかなり気を遣って加熱プログラムのプロファイルを設計しなくてはいけないと考えます。


ではなぜ高速成形がトレンドになりつつあるFRP業界であえてこのような製品をリリースしたのか、物性を見ながら考えてみたいと思います。

 

多くが一般的な物性だが一部で極めて高い物性があるものの…


今回の材料はあくまで航空機向けと書かれています。

そのため、上記のような加熱時間が長いということもそれほど問題ではないのだと思います。
むしろ圧力を脱気だけで(つまり、1気圧で)成形できるということにメリットを感じるべきなのかもしれません。


Tencate は非常に細かい物性値を公開しています。

以下のURLをご覧ください。

http://www.tencate.com/emea/Images/prodcomp_28-45749_TC380_DS_051817_NEW_Web.pdf


このような基本物性をまずはカタログ値ベースで公開してくれるのは、
プリプレガーとしては顧客に寄り添うスタンスで好印象です。

ここで物性値の中身をざっと見てみます。


計算過程の詳細は割愛しますがRCは34%で樹脂の密度が1.18とのことですので、炭素繊維の密度が仮に1.8とするとVfは約56%(FRPの設計や材料を担当される方はRCからVfを計算できるようにしておくといろいろ便利です)。

比較的高めの設定ですが、常識の範囲内といったところです。


UDと織物がありますが、今回はUDについてのみ議論してみます。

耐熱の指標にもなるDMAによるガラス転移温度は200℃超で比較的高い耐熱性を保持している一方、層間せん断や0°引張(σ11  2923 MPa、E11 183 GPa @RTD)、90°引張は想定通り(σ22 76.5 MPa、E22 7.9 GPa @RTD)の値。
そしてやや面内せん断強度が低いというくらいで実は目立った値ではありません。


そして残念ながら高靭性である、という文言とは裏腹に Mode I、IIのエネルギ開放率(G1C:490 J/m2、G2C:1821 J/m2)も特段高いわけでは無く、靭性が極めて高いという売り文句に該当するものではないと考えます(もちろん、カタログベースの話なので実測しないと何とも言えませんが)。

しかしながらσc11(0°圧縮)の値は思わず何度も見直してしまいました。

σc11で1496 MPa(@RTD)です。

私の感覚的なものと比較して倍近い(2倍まではいきませんが)値です。


しかも行っている材料試験の規格がCLCであるASTM D6641。
最も信頼性の高いと言われる圧縮試験手法です。


これが本当であれば、この材料は圧縮だけ他の物性値と比較して抜群に高い材料となり、
しかも成形時の圧力が大気圧分である1気圧でいい、
となれば歴史が引っくり返るような(少し大げさですが…)特異な材料となります。

今回 TC380 と組み合わせている炭素繊維はHexcelのIM7。
こちらも中弾性高強度の今となっては一般的なグレードですので、
今回のような圧縮強度が出るとは思えません。

 

ということで一般的な物性に特記事項は無く、
高靭性といいながらもいうほどエネルギ開放率も高くない一方で、
抜群に高い圧縮強度を示すという非常に変わった材料だといえます。


私個人的には圧縮強度は値そのものや試験方法に何らかの誤りがあるのではないか、と思っています。

 


いかがでしたでしょうか。

今日は Tencate からリリースされた成形圧力が低くても物性値が出るという TC380 エポキシレジンシステムのプリプレグをご紹介しました。


物性値には圧縮を初めとした値に疑問符のつくものもありますが、
このようなグレードの材料が航空機業界で求められつつある、
という一つの参考になると思います。


 

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