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Injection による FRP の接着

2016-05-12

BETAFORCE™ という FRP を Injection により接着するという技術が Dow automotive systems から発表となりました。

http://www.dowautomotive.com/news/2016/20160503a.htm


こちらの技術は本年の JEC Europe でも大々的に展示されていた BMW のピラー部分補強などに応用できると書かれています。

FRP、特にCFRPによる金属部品の部分補強に関する要望というのが上記の BMW のBピラーへの適用以降急激に各社で注目されているというのが個人的な印象でもあります。

BETAFORCE™ はポリウレタンを主構造とした二液性の接着剤をインジェクションするという技術であり、
FRPと金属の接着性と、線膨張差によるひずみを吸収するという機能を持たせながら、
従来のフィルムやペーストを主体とした接着形態よりも工程の量産性を高めたと述べられています。


ポリウレタンは以下の記事でも述べたことがありますが、低粘度と安定した物性を武器に最近FRPの新たなマトリックス樹脂として注目されてきています。

韓国 自動車市場をにらんだ Quick Step FRP 量産技術適用契約


最近よく目にするのはスプレーレイアップに使うというケースですね。


今回出てきたこの技術の優れた点は、多少の接着性を犠牲にしながらもポリウレタンをベースにしたインジェクションに舵を切ったという考え方の切り替えです。


言われれば当たり前のこの手のアプローチを具現化できたという点をまず評価しなくてはいけません。


逆にいうとこのように新たなアイデアを従来の考えにこだわらずに適用させ、情報発信をできていることです。

もう一つの利点は、このような樹脂層の形成により絶縁しているということです。

カルバニック腐食のような電蝕を起こす可能性のある炭素繊維強化プラスチックのCFRPに対しては非常に有効なアプローチといえます。

 


材料の電位差による腐食は金属との組み合わせを行うにあたっては、最大限の注意を払わなければならないというお話は本年1月に情報機構様の依頼で開催したCFRP設計セミナーでもお話をしました。


ただ、それ以外の点について実はこの記事は課題だらけと言わざるを得ません。

順番に課題を見ていきます。

 

1.ゴム弾性接着層を形成することによる荷重伝達の困難性

部分補強という考えに大切なのは外力による荷重が生じた場合、補強に用いたFRPにどれだけの効率で荷重を伝達できるのかが重要です。


上記のプレスリリースでもねじりモードの剛性向上に効果があると書かれています。


ところが、線膨張係数の違いによる寸法変化分、加えて硬化収縮による変形を吸収するためにゴム弾性を有しているというのが BETAFORCE™ 。

つまりFRPと金属との間にゴムの層ができている状態なのです。


これでは外力によって金属に変形が起こった場合、この接着層が変形を起こすため荷重がFRPに伝わらず金属部品は大きな変形をすることとなります。


そのため接着層をあまり厚くし過ぎると主目的の部分補強ができないという本末転倒の事態に陥ります。

その一方であまりにも接着層を薄くしようとすればインジェクションをする際に樹脂が流れるスペースが狭くなり、樹脂の充填が困難となります。

本点はまず注意すべき懸念の1つです。

 

2.インジェクションする時のコアとキャビティの設計

いわゆる型設計です。

樹脂をインジェクションする場合、通常インジェクションは金型の内部の空間を充填し、さらにそれよりも少し外側に樹脂が逃げる道を作っておくことで完全充填を目指すのが一般的です。


今回のものはイメージの一つとして中空の金属部品を挙げています。


少しイメージを膨らませていただければわかると思いますが、中空の金属部品の中にFRPを入れた状態でどのようにインジェクションするのでしょうか。


インジェクションによってFRPの位置はずれませんか。

そもそも、中空にインジェクションするということはどこか打ち込まれた樹脂を内部に食い止める機構が必要ですが、そのような高圧に耐えられる部品設計は可能なのでしょうか。

正直疑問だらけです。

単純形状や外側をコーティングするのであればインジェクションも有効なのかもしれません。なぜならば、外側を Injection 向けの型で覆えばいいからです。

しかし、中空空間の中に何かが入っておりその隙間に樹脂を打ち込むのはいうほど簡単ではないということに気がつかなければなりません。

 


全体を通じてですが BMW の後追いの傾向が強いのが非常に懸念されます。

これは日本に限らず全世界的に見られる傾向です。

 

部分補強は早く作ることのために行うのではなく、材料を複合化してその特性を高める、または無い特性を発現させるのが目的です。

材料に限らず基本的にはシンプルな構成の方が好ましいのです。


この原則を忘れている方々が世界中のFRP業界に増えていることに危機感を覚えることが最近特に多い気がします。

 

少しずつでも本来あるべき技術は何かという根本的な議論ができるようになることを望みます。


 

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