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生産性10倍の 新しい炭素繊維製造方法開発

2016-01-16

生産性10倍の炭素繊維製造方法開発

やっと表に出てきたか、というのが第一印象でした。


昨日、一部の一般紙でも取り上げられていた本ニュースをご紹介したいと思います。


NEDO、東京大学、東レ、帝人(東邦テナックス)といった名だたる研究機関、大学、企業が連携して取り組んできた一大プロジェクトです。


NEDOが概要含めプレスリリースで述べています。

http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100513.html

 

一般紙では朝日や日経、日刊工業新聞などでも報じらていました。
あまり大きく報じられていたわけではありませんが、朝日新聞は昨日の朝刊で5センチ四方程度のスペースでは書かれていました。


※朝日新聞
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12159557.html?rm=150

※日経
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=404556&lindID=5

 


この話はFRP業界では比較的古い話で、以下の平成23年(2010年)から国を挙げて取り組んできた 革新炭素繊維基盤技術開発 の一環です。

http://www.meti.go.jp/policy/tech_evaluation/c00/C0000000H25/140312_wg8/1-1_8hyoukawg.pdf

 


なぜ日本の税金を投入してまで炭素繊維にこだわるのでしょうか。

実は、炭素繊維は日本が世界に誇る産業製品の一つで、今この瞬間も世界をシェアという観点では圧巻しているという事実があるからです。


進藤昭男 先生が世界初の炭素繊維を発明されて以来、最適化を繰り返しながらほぼ進藤先生のやり方が量産でも踏襲されてきました。
 


繊維業界の厳しい競争にさらされ世界の名だたる繊維企業が炭素繊維事業から早々に撤退を決める中、日本の繊維企業だけは最後まで踏ん張り、今の世界圧巻市場を築き上げました。

ところが近年、盛り上がるFRP業界に目を付けた世界中の企業が炭素繊維の生産に再度取り組み始めています。


その時に勝負の主眼となるのが「コスト」。


価格競争にさらされて日本の炭素繊維事業が地盤沈下することに対して強い危機感を持った日本政府は、
税金を投入して価格的にも競争力のある、


「従来法とは異なる炭素繊維製造方法を開発する」


という旗を掲げ、日本の該業界における英知を終結させ取り組んできました。


その結果が、今回の60年越しの炭素繊維新製法の開発につながりました。

NEDOのHPに細かいことが書いてありますので詳細の説明は割愛しますが、ポイントは3点あると書いてあります。


1.耐炎化不要の新規前駆体の開発

2.マイクロ波による炭素化技術の開発

3.プラズマによる表面処理技術の開発


引用元:
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100513.html


当然ながらどれも非常に重要であることに疑いの余地はありません。

 

ただ、私の個人的な見解として最も重要だったのは、


「耐炎化不要の新規前駆体の開発」


であると考えています。


何故でしょうか。

 

私の実体験を踏まえながらご説明したいと思います。

 


FRP業界で設計者として業務を推進している時、非常に不思議な風景に出くわしました。

それは、


「材料というのは買ってくるもの」


という考えです。

実際にその材料を使う人が、


「買ってくればいい」


という考えを持っていることに私は強い違和感を覚えました。


というのも、私は元々有機合成を専門としていたからです。


「どうして何者かわからない材料を使い、それに適した図面を作成することができるのだろう」

多くの人が、機械特性を調べる材料試験、形を作った後の破壊試験、応力や振動状況を見るCAEといった点でスキルを持っている一方で、
最も製品の原点に近い材料をあまり注目していないことが不思議で仕方ありませんでした。


結局このような疑問や違和感は量産立ち上げ時の問題という形で姿を現すことになります。

 

というのも、

「詳細不明の購入材料の持つばらつきや未知の部分を”成形加工技術で吸収する”」

という考えにより、ひずみが成形加工工程に集中していたからです。

 


FRPは異方性を持つ極めて特殊な材料です。

これを成形加工工程で支配しようという考え自体に無理があります。


結局私が行きついた答えは、


「自分で製品に見合う材料を開発する」


というものでした。

そして、今回の発表の3つのポイントの一つである、


「耐炎化不要の新規前駆体の開発」


は、


「材料を設計し直す」


ということを分子レベルで取り組んだことを意味しています。


根本的な材料の構造を変えたのです。


これにより、マイクロ波による炭化処理やマトリックス樹脂との接着性を高めるプラズマ処理といった、”後工程”の活用に結びついたのです。

マイクロ波による加熱やプラズマによる表面処理はもちろん高度な技術ですが、根本的な技術で無いのも事実です。


やはり、分子構造設計からやり直したということが今回の発表で最も価値のあることだと考えます。


日本の化学産業は世界的に見て本当にレベルが高いです。


ドイツの研究機関にもいましたし、欧米企業との共同開発を経験しました。


それでも日本の化学産業のレベルの高さは今でも変わらないということを強く感じます。

今回新しく開発された炭素繊維は、恐らく物性を犠牲にしているものと推測します。

そのため、航空機の一次構造材など極めて高い安全性を要求される部分は適用不可ですが、それでも従来の炭素繊維と比較し、低コスト高生産性を武器として適用範囲が拡大すると期待されます。


今回の開発がうまく量産化に結び付き、現状のFRP業界の構造再編につながるのか。

注意深く見ていきたいと思います。


 

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