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SGLが熱可塑性の 長繊維FRPテープ を発表

2015-10-09

タクトタイムの短さと材料保管性の良さ、そして靭性の高さから将来的な適用拡大が期待される 熱可塑性FRP ( FRTP : Fiber reinforced thermoplastics )。


BMWの i シリーズ プロジェクト参加で注目を浴びる SGL が FRTP のテープを発表しました。

 

このテープは、 long-fibre-reinforced thermoplastics (LFRTs) という名称とのことです。


先月の Composite Europe にて、インジェクション成形とこの LFRTs の組み合わせによって作った自動車向け製品の展示を行った模様です。

http://www.sglnewsroom.com/en/reports/report-detail-page.16320.php

 

製品のラインナップですが、炭素繊維とガラス繊維の2パターンがあるようです。


炭素繊維は一例として50Kの SIGRAFIL C T50-4.0/240-T140 、ガラス繊維は、24K( SIGRAFIL C T24-4.8/240-T140 )と50K( SIGRAFIL C T50-4.0/240-T140 )というものを挙げています。


マトリックス樹脂は PA や PPA とのことです。

 

尚、PPAはポリフタルアミドの略で、複数種のジアミンとフタル酸の混合物の略称です。

吸湿性や機械特性の改善のため、モノマーの構造を変更したものをいいます。
(変更の例としては、フタル酸のカルボキシル基の位置をパラ型ではなく、メタ型にするなど)


SGLは自動車だけではなく、スポーツや航空機事業も含めてターゲットにすると述べていますが、PA系をマトリックスにしている時点で、自動車向けに、ある程度の機械特性と耐熱性を維持しながらFRPを適用させようという戦略は透けて見えます。

 

 

この記事から読み取れることは何でしょうか。

一点目は強化繊維として CF つまり炭素繊維にくわえ、ガラス繊維をラインナップに加えていること。

CF は物性が高いのですが、現段階ではどうしても高価。

この素材価格を克服するためには、設計、製造プロセスをどれだけ最適化しても、
今の技術では劇的にトータルコストを下げることが困難である、
という考えが欧州を中心に広がりつつあります。

当然ながらCFの使用量が増えてくれば素材価格は下がりますが、
1、2年で急激に下がるとは考えにくい。

そのため、ガラス繊維を積極的に使おうという流れができつつあります。

 


また、SGLが明確な LFRTs のアプリケーションを述べていないというのもポイントです。

あえて言うのであれば、インジェクション成形との組み合わせ、
つまり部分補強に使えるのではないか、ということが言いたいのかもしれません。

しかし、材料のコンセプトとしてはやや弱いかな、というのが印象です。

もちろん、今注目度の高いSGLには様々な業界からの引き合いが来ているため、
アプリケーションのコンセプトはいくつかあると思います。

しかし、製品を発表した時点ではある程度明確なコンセプトを打ち出せないと、
使い方の分からないユーザーの手では使い切れずにすたれてしまうという恐れがあるのです。


材料や素材を販売する企業も、

「とりあえず、こういうものを作りました。使ってみてください。」

というスタンスでは危険です。

BMWの時のようにファイナルアプリケーションを理解する企業が引っ張ってくれればいいですが、
そのような状況は極めてまれです。


素材メーカーもある程度は想定されるアプリケーションを、
明確なコンセプトに基づき、いくつかの実例を用意する、
ということを心がけてはどうか、と思います。

 

そろそろ淘汰が始まると予想されるFRP業界。


業界が沸いている今のうちに基礎的なデータを積み重ね、
川上から川下までの広い領域を見ながらコンセプトを確立し、
積極的な情報発信を行う。

 


このような行動計画ができている企業が今後FRP業界をけん引していくに違いありません。

 

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