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FRPも使われる競技用 自転車 の安全規則

2015-10-07

FRPが多く用いられているものとしてやはり頭に浮かぶのは航空宇宙産業。

それ以外では、風力発電ブレード、管更生、建築資材、レース車両、高圧タンクなど様々です。

そんな中、意外にも身近に使われているのが 自転車 です。


自転車 といっても、普段町中で乗るようなものではなく、いわゆる「競技用」です。


競技用自転車が用いられる競技例として、 Road World Championships – Richmond, USA のダイジェスト動画をご紹介します。

http://www.uci.ch/road/videos/men-elite-road-race-highlights-205-road-world-championships-richmond-usa/

 

悪路を含めたレースは過酷を極めているという様子がよくわかると思います。

軽量化が命のロードレースにおいて、CFRPは肝となる材料です。

 


軽ければ軽いほどこぐのに必要な力は少なくて済むわけなので早く走れる。

CFRPが得意とする、


「軽量化によるメリットが極めて明確化されている」


という状況が自転車競技でもその大前提に揃っているということがわかります。

 

その一方で、忘れてはならないのはやはり「安全性」。


CFRPを用いた自転車の事故も起こる中、自転車を乗る競技者の安全性を確保する規則を展開する組織があります。


それは、

UCI ( Union Cycliste Internatioale )

です。

UCI_logo

( The image above is referred from " http://www.uci.ch/ ".)

この組織はCFRP、いわゆるCompositeを用いた自転車に対しても安全性を高めるために必要な要求事項をまとめています。


それが以下にある Clarification guide of rules というものです。

http://www.uci.ch/mm/Document/News/Rulesandregulation/16/51/61/Clarificationguideofrules2012-ENG_English.PDF 

 

ここには書かれていませんが、例えばCFRP製の車輪の安全性を評価するために、
人が自転車に乗っているという状況、つまり一定荷重をかけた状態で耐衝撃性を評価し、
どの程度のエネルギーで車輪が形状を保持できなくなるのか、
という破壊試験を行うことも要求しているとのことです。


また、競技用自転車は基本的に横から見ると下図に示すように2つの三角形が組み合わさっているフレーム形状をしています。

side_view_bicycle


Side view of a bicycle
(The image above is referred from "http://www.uci.ch/mm/Document/News/Rulesandregulation/16/51/61/Clarificationguideofrules2012-ENG_English.PDF".)

 


これら基本設計をベースにした安全規則が書かれているのが上述の  Clarification guide of rules です。

例えば、上記の規則の中の p.20 には、

「 Composite frame の自転車の場合、金属フレームよりも曲率はなだらかにすること」

と述べられています。


これは、異方性を有するFRP材料の場合、応力集中によって局所破壊が起こることにより、
その破壊が層間を通じて一気に広がり最終破壊に至る、ということを懸念して設定されているものと推測します。


また、p.25には前輪を支えるフレームに取り付けられるハンドル部分を支えるにあたっては、

「このフレームの厚みの半分以上をオーバーラップさせ、片持ちはりにしないこと」

とも述べられています。

 

これも、実際の運転中に万が一ハンドルを支えるフレームの根元が破損した時に、
その破損したフレームが乗っている人の顔や胸に刺さらないようにしたい、
また、前輪での衝撃荷重を層間せん断モードではなく、圧縮として受けたい、
というFRPの異方性を考慮した規則になっていると考えます。


このようにまだまだ不明な点の多いFRPの設計において、
後追いとはいえ安全性を考慮した規則を作っていこうという試みは、
FRPをきちんと使いこなすという観点でも重要です。

 

やはり、市場において「信頼性」を構築できなければそもそも存在価値を疑われてしまいます。


これから人が直接触れるものにFRPが使われる場合、このような安全規則が整備されていくでしょう。


その一方で規則の弊害もあると述べられています。

 

それは、


「規則が、イノベーションを制限してしまうのではないか」


というジレンマです。

安全性を最優先してしまうと新しいことができなくなる、
という良くある話です。


これについて UCI の Technical Manager, Mark Barfield 氏は雑誌でのインタビューでこう答えています。

———
もちろん、規則が新しい発想を制限してしまうこともあるだろう。

しかしその一方で、イノベーションもある程度は制御されるべきであると考える。

我々の最大の目的は、安全に自転車でレースができること。

そのためには産業界と連携しながら、イノベーションと安全性を両立できる着地点を見出したい。
———


そして、FRP業界における問題点を自転車産業からの目線でも述べてくれています。

———

CFRP業界の最も大きな問題は、検証するための適用事例が少ないこと。

そのため、適した規則を作るために必要な知見が不足している。

この第一の原因は、市場のニーズにCFRP製の製品が対応していないことではないだろうか。

自転車でも偽造品や劣悪品質商品が出回り、FRPに関する印象悪化はもちろん、
そのメーカーのブランドを傷つけることになるのではないか。

何より、その製品を使うお客様に危険が及ぶことは最大の懸案である。

———-


私も非常に共感できる話でした。


今非常に盛り上がりを見せるFRP業界ですが、
何より大切なのは安全性。


この安全性を基軸に市場の信頼を勝ち取る、という大前提を忘れるとその製品を世に出した企業のブランド力に大きな汚点をつけること、さらにはFRP業界そのものが淘汰されることになりかねません。

 

FRPの安全性を考え直すきっかけになれば幸いです。
 

 

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