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FRP学術業界動向 – FRPの 寿命予想 と破壊形態モデリング研究

2015-06-22

FRPのコア技術の一つとして忘れてはならないのが、

「材料の 寿命予想 」

です。

 

実際にその材料を使い始めてどのくらいで壊れるのか、という疲労強度。


どのくらいの力がかかると、その後進展するような損傷につながるのか、という静的強度。

 

どちらも材料を選定して設計するときには必須の考え方です。

 

今日の記事ではFRP学術業界動向として、材料の静的、並びに疲労寿命予想に関する論文を見てみたいと思います。

 

 

今回ご紹介する科学誌は、Elsevier社発行の Composite Structures です。

http://www.journals.elsevier.com/composite-structures/

 

FRPに限らず「複合材料(2種類以上の異種材料の組み合わせで成り立っている材料の総称)」の構造体というカテゴリーでは最も名門誌の一つです。


私も最新の論文はこちらへの投稿を検討中です。

 

そして、今日ご紹介するのは以下の論文です。


Life prediction of woven CFRP structure subject to static and fatigue loading
Pages 185-194, 119, 2015
Satrio Wicaksono, Gin Boay Chai

 

参考までに Abstract を転載しておきます。尚、評価対象となっているのは題名にもあるようにクロス材(織物)のCFRPです。

—————————————————————————–
Abstract

The fundamental material properties of woven CFRP (carbon fibre-reinforced plastics) 
material subjected to static and fatigue loading were extensively carried out. 
The structural responses of woven CFRP I-beam structure subjected to four point
 bend tests were also performed. Details of the test set-up and comprehensive 
results are presented in this paper. The results of the fundamental material 
properties were used in a proposed “stiffness decay” model to predict the static 
and fatigue responses of a woven CFRP I-beam structure in four point bending. 
The proposed “stiffness decay” model was applied to predict the onset of initial 
failure and the progression towards final failure. The predicted results of 
the static response, fatigue response, fatigue life and stiffness decay predictions 
were compared with the experimental data. Good correlations between predicted 
and experimental results provide the necessary confidence 
in using the proposed “stiffness decay” model.

———–<referenced by http://www.sciencedirect.com/science/journal/02638223/119>


この論文のポイントは、


1.静的、疲労の両方についてモデルによる予測を試みている

2.FRPの破壊につながる剛性低下をモデルに考慮している


という2点です。


静的、疲労、それぞれについてFRPのモデリング方法をご紹介し、
それぞれのモデルと実際の試験結果についての比較結果について概要を述べます。

 

疲労寿命モデルについては既存のモデルである、Tsai-Hill criterion をベースにしています。

実際の試験によって得られた疲労強度との比を11方向(面内x方向)、22方向(面内y方向)、12方向(xy平面せん断方向)
について考慮したシンプルなモデルです。


本論文ではこのモデルに対して新たに2つの考えを導入しています。それは、


a. Phenomenological(現象論):実際に見られる事象の考慮

b. Progressive damage(損傷進展):破壊が進む工程の考慮


aについては、余剰剛性と余剰強度という考えを導入し、
bについては、亀裂進展を軸に Mode I (開口)、Mode II(1方向せん断)、Mode III(回転せん断)、
といったモードを考慮し、内部破壊の進展を考えています。

上述のaのモデルが論文中で静的試験のモデルとして採用されているそうです。


これらのモデルを用いてクロス材CFRPでのIビーム4点曲げ評価についてFEM解析を実施。

この結果と、実際の試験について静的、並びに疲労によって破壊するまで試験を行い、
FEMによる予測がどのレベルにあるのかという評価を行っています。

 

結果、疲労試験については最終破壊だけでなく初期破壊もある程度の高い精度で予測することに成功。

SN線図を見ると上述の各破壊強度とサイクル数の予想が試験と非常に近い傾向を示していることがわかります。

 

加えて静的試験についてはSS線図は解析と試験でほとんど同じ結果を示し、
破壊形態についても概ねメッシュの変形で実体の破壊形態も予想できています。

 

 

 

この論文を読んで最も感銘を受けたのは、


– 最終破壊だけでなく、初期破壊に着目している


という部分です。

 

FRPというのは外から見えない破壊が内部で蓄積し、
それが重なり、また広がることによって最終破壊に至ります。


この破壊形態の複雑さがFRPの設計を困難なものにしています。

 

今回ご紹介した論文では、上記の難しさを可能な限りシンプルなモデルを用い、
疲労試験中の剛性低下や初期破壊の発生とその進展を考慮し、
その状態を実際の試験で評価するというとても丁寧な評価を行っています。


詳細は別にしても、FRPがどのように破壊していくのかということを理解するにはとてもいい参考論文だと思います。

 

 


欲を言えばですが、FEMで変形と破壊進展の様子が静的と疲労で予想していたので、
この内部破壊の様子を非破壊検査によって調べ、
解析結果とどのくらい相関が取れているのかというのを是非とも知りたいものです。

 


今回ご紹介した論文を参考にFRPがどのように破壊するのか、
というイメージを持っていただければ幸いです。

 

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