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ドライでの自動積層を可能にする HiTape ® が Hexcel から発売

2015-04-29

Hexcel からドライ状態での自動積層を可能にする HiTape® が発売されました。

 

HiTape® は JEC Europe 2015 で JEC Innovation Award for Aerospace を受賞したとのことです。

http://www.hexcel.com/news/market-news/news-20150331

 

Automated Tape Placement ( ATP )、Automated Fiber Placement ( AFP )など、
FRP業界においては自動積層がブームの一つとなっています。


海外では ADC ( Automated Dynamics )などの著名企業もあり、日本でも津田駒工業が本事業に参入しています。

 


そしてHexcelは HiTape ® の適用拡大に先立ち、 fiber placement 装置メーカーと手を組みながら様々な評価を進めています。


パートナーとしては、coriolis 、mtorres が選定されています。

※coriolis

http://www.coriolis-composites.com/news/news-detail/items/why-choosing-coriolis.html


※mtorres

http://www.mtorres.es/en/aeronautics/products/carbon-fiber/torresfiberlayup

 


そして、これらの装置メーカーの AFP 装置を用いた HiTape® の積層の様子は以下のページにある動画でも見ることができます。

http://www.hexcel.com/Products/Aerospace/AHiTape

 


この技術は非常に興味深いです。


まずは積層するテープがドライの繊維であるということ。


一般的には熱硬化性もしくは熱可塑性プリプレグのような、繊維に予め樹脂を含浸した材料で積層します。


特に熱硬化性樹脂をマトリックスとしたプリプレグでは材料のアウトタイム(室温に暴露されている時間)の管理、冷凍庫から出したりしまったりするときの結露防止対策など、材料管理にとても気を遣います。


熱可塑性プリプレグでは、PEEKやPEKKのような高耐熱の熱可塑性樹脂を用いる場合、融点が高いためにそもそもAFPで圧着することは難しく、部分溶着によってプリプレグがはがれないプリフォームにするまでが一般的です。

(もちろん、自動積層で熱可塑性プリプレグをプリフォームできることは非常に価値があることです)

 


そして HiTape® は熱可塑性プリプレグの自動積層のようなプリフォームを行い、
その後RTMによって樹脂を含浸させ、30mm厚みまでであれば繊維体積含有率を58?60%と、
航空機の一次構造材相当材料まで高めることができると書かれています。


UDドライ繊維の積層の後、樹脂の含浸によって構造体を成形するRTMやInfusion成形プロセスで弱点とされる、成形物のCAI (Compression After Impact:衝撃を加えて内部損層を含有する試験片の圧縮強度評価)の物性で非常に高い値を示したとのこと。


ドライ繊維に樹脂を含浸して成形するという形態の材料が弱点とする層間剥離進展、つまりトランスバースクラックに対してもある程度の強度を有するということを意味しており、FRPで最高物性を誇るプリプレグと同等の性能を発揮できるということを示したとも考えられます。

 

 


また先述した動画を見る限り、 HiTape®を積層する際、何かの光を照射しているのが見えます。


加えて材料の保管に冷凍庫は必要ないと言っていることから、 HiTape®はバインダーになるような熱可塑性樹脂が含浸されていると予想されます。もしかすると、core-shell構造の接着剤が分散されており、圧力によって接着硬化が進むという形態のバインダーかもしれません。


いずれにしても積層時にバインダーで繊維を仮止めするというのは、
FRP製造工程で最も時間のかかる「積層工程」という部分を機械化できるということを意味しています。

 

 


ここで一つ質問です。

 

自動積層において最も重要な役割は何でしょうか。

 


Hexcelのホームページにも書いてありますが、「低コスト化」と考える方が多いかもしれません。

 


もちろん積層工程に人が必要ないというのは大型部品において、
自動積層工程導入による低コストの効果は表れやすいのかもしれません。

 


ところが実際のFRP量産現場を経験した上で自動積層の存在価値は何かときかれれば、


「最低品質の底上げと安定化」


であると、私なら答えます。

 


この話をADCの社長とお話しした時、彼も私のコンセプトに強く同意していました。

 


自動積層工程向けに開発された材料であるHiTape® がどのくらいのポテンシャルを持っているのか、というのはまだ未知数ですが、興味深い材料を世に送り出している Hexcel の新製品の実力を見てみたいところです。

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