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FRP戦略コラム- FRP材料 選定 するにあたっての注意点

2015-02-22

FRP材料 を 選定 するにあたって重要視すべき観点とは何でしょうか。


実際のFRP量産体験を踏まえて4点ほど感じたことを今日のFRP戦略コラムではご紹介したいと思います。

 


実際にFRP材料をどのようなアプリケーションに適用するかによって多少の修正はありうるかもしれませんが、最低限この4点を抑えておきたいというところに議論を集中してみます。

 

 

1.マトリックス樹脂の種類


FRPの「使用環境」の限界というのは、ほぼマトリックス樹脂で決まります。

この場合の使用環境で最も大きな要素は間違いなく、


温度


ということになります。

 

FRPの耐熱性を支配するのはマトリックス樹脂であるため、
使用環境温度を考慮して樹脂を選定するのはとても大切です。


使用環境が100℃近いのにマトリックス樹脂としてポリプロピレン(PP)を選んで部品を成立させるのは極めて難しいでしょう。


もちろん、温度だけではなく耐衝撃性、クリープ強度といったマトリックス樹脂が担う割合の高い対象物性についてもきちんと考慮することが重要です。

 


また、熱可塑性樹脂を選ぶのか、熱硬化性樹脂を選ぶのかということも大きな分かれ道となります。

 

成形工程を考慮した場合、上手く工程設計できれば熱可塑性樹脂を用いることで極めて短時間での成形が可能になります。
ただし、熱可塑性樹脂の場合、材料の保管が非常にやりやすいというメリットがある一方、熱硬化性樹脂よりも耐熱性が劣り、さらに強化繊維との接着性が低いためにFRPとしての物性が発現しにくいといったデメリットも存在します。


その一方で熱硬化性樹脂を選んだ場合、樹脂反応工程において低粘度の状態があるため、複雑形状成形や外観欠陥の少ない部品を成形することが容易になります。


加えて三次元架橋反応による高い耐熱性や機械特性、官能基を多く有することによる強化繊維との高い接着性によってFRPとして高い物性が実現できる、といったメリットがあります。


しかしながら、材料の保管には温度や時間といった管理が必要なこと、硬化が終わって賦形できるまでには熱可塑性樹脂よりも時間がかかるといったデメリットもやはり存在します。


それぞれに利点、不利点とありますが特性を理解した上で選定することはとても重要です。

 


2.強化繊維の種類

強化繊維には大きく分けて有機繊維と無機繊維があります。


無機繊維の代表格である炭素繊維は物性が非常に高いものが多く、
FRPの強化繊維として最も多く用いられている繊維の一つです。

また同じ無機繊維であるガラス繊維は、より安価なアプリケーションとしてこちらもかなり広く用いられています。


有機繊維としては、ビニロン繊維やアラミド繊維が用いられます。


汎用のビニロン繊維と異なり、アラミド繊維は強靭さを最大の強みとする高機能性有機繊維であり、
航空宇宙やレース車両に用いられています。

 

無機繊維は抜群の物性を有していますが、
基本的にあまり伸びることができない繊維です。

このため、剛性は高くなりますが耐衝撃性については自らの破断伸びが小さいゆえに破断しやすいというデメリットもあります。

それに加えて炭素繊維は非常に高価である、というのもネックです。


その一方で、有機繊維は伸張性があることで耐衝撃性に優れた繊維であることが多いです。
自らの変形によって衝撃を吸収できるからです。

ところが、紫外線、水といった環境負荷に対する耐性は、反応性の低い無機繊維よりも敏感であり、
徐々に物性が低下していくことが知られています。

 

 


3.繊維の形態

強化繊維に樹脂を含浸させる場合、繊維はさまざまな形態を有しています。

例えば、何もされていないまっすぐなストランドで含浸すればUD(uni direction)、編んであれば、fabricやbraiding、繊維を短く切って含浸してあればチョップドストランドとなります。


当然UDが繊維方向の強度という観点では最も高い性能を発揮しますが、異方性が非常に大きいのが弱点です。
繊維方向と垂直方向の強度はFRPとしての実測ベースで20?40分の1しかありません。


その一方、編みこむことで異方性を低減させるという事も一案です。

この場合は強度がUDよりも低下する事、そして形状によってはうまく積層できないという事もある、
という事を考慮しなくてはいけません。

また、細かい場所に繊維を充填するには積層段階で細部まで繊維をいれるという丁寧さが必要です。

 

そして最近トレンドとなっているのがチョップドストランドです。

繊維を短く切って様々な方向を向かせて樹脂を含浸させることで、異方性の問題と成形性の問題を同時に解決することを目指した材料です。


材料にある程度流動性があるため、積層にそこまで気を遣わなくても細かいところまで入り込んでくれます。


ただし強度の大部分を担う繊維を細かく切断していることから、強度の低下は不可避となります。

 

 

4.材料供給安定性

実はこれが最も大切です。

「この材料で必要な物性をだすことができた。これを採用しよう。」

というときがあるかもしれませんが、量産が視野にあるときに供給安定性を考えないことは極めて危険です。


特にFRPは代替材料が必ずあるとは限らないことから、
その材料が製造を取りやめたとなった場合に備えて、
代替となる材料を見つけておくことが最高のリスクヘッジとなります。

 

 


いかがでしたでしょうか。

FRP材料の選定を行うにあたっての参考になれば幸いです。

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