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初めてのFRP- マトリックス樹脂 について

2014-12-17

FRPの初心者向けの技術紹介として、今回はFRP構成要素の一つである マトリックス樹脂 についてご紹介をさせていただきます。

 

FRPの主な構成要素は、先日紹介した「強化繊維」と今回ご紹介する「 マトリックス樹脂 」です。

 

FRPの業界では、マトリックスのことをマトリックス「樹脂」ということが多いです。

 

 

そもそも「樹脂」というのは何なのでしょうか。

 

 

樹脂というのは高分子化合物の一種で、英語でいうとPolymerです。

 

分子が長く連結されたようなイメージのものを高分子といいますので、樹脂の中には分子が鎖のように長く連結したものでできていると考えて問題ありません。

 

 

樹脂というのは大きく分けて「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」の2種類あります。


それぞれについて特徴を説明していきます。

 

 

– 熱硬化性樹脂

複数の架橋点を持ち、3次元的な網の目構造を持っています。

 

FRPのプリプレグのマトリックス樹脂としては未硬化の樹脂を含浸しているのが一般的ですので、加熱させる「硬化反応」によって、三次元架橋構造を形成していきます。


そのため熱をかけられたマトリックス樹脂は、一度水のような低粘度の液体に変化した後、徐々に硬化していくという段階を経て硬化物へと変化します。


この「一度水のような低粘度の液体に変化」するという熱硬化性マトリックス樹脂の特性は、形を作る「賦形(ふけい)」という工程で大きなメリットとなります。

 


なぜかというと、低粘度の材料というのは様々な形に変化させることが容易だからです。


低粘度の樹脂を含んだ繊維というのは、我々が着用しているような服と同じような状態となるため、自由に動けます。この時に圧力をかけながら型に押し付ければ、そのまま固まることでほしい形へと賦形することができるのです。

 


また、熱可塑性樹脂に比べて加熱に必要な温度が「低い」、そして「一定である」というのもメリットです。


熱可塑性樹脂は後で説明しますが、融点を大きく上回る温度で圧力をかけないとマトリックス樹脂を低粘度にすることができません。


さらに、熱可塑性樹脂の場合は冷却しないと脱型できる硬さにならないため、加熱の後の冷却が必要です。

 


そして、最大のメリットは熱可塑性樹脂よりも「耐熱性がある」という点。


強固な三次元架橋のおかげで、熱硬化性樹脂は一般的に高いガラス転移温度を示します。

 


しかしながら、もちろん弱点もあります。


その筆頭に挙げられるのが「脆さ(もろさ)」。

 

高い耐熱性を有するが故のデメリットですが、強固であるため柔軟性には欠けます。

 

この脆さというのは構造設計でも様々な限界を生む事が多く、難しいところです。

 

また、硬化反応が終わるまでに時間が必要であるため、一般的には1時間以上の一定加熱が必要です。


以前このページでもご紹介しましたが、数分で硬化が終わるとよばれる熱硬化性プリプレグもありますが、まだ一般的ではありません。

 

 

熱硬化性樹脂として代表的なものとしては、FRPに多く用いられている、エポキシ、不飽和ポリエステル、フェノールをはじめ、ユリア、メラミン、ポリウレタンなどがあります。

 

以上が熱硬化性樹脂の概要です。

 

 

 

– 熱可塑性樹脂


熱可塑性樹脂は、既に重合した(分子が連なった)高分子が絡み合った状態にあります。

 

このため、熱硬化性樹脂とは異なり、一度加熱して軟化、溶融させても再度冷却することで樹脂に戻すことができます。

 

熱可塑性樹脂のメリットはこの固体と液体の可逆反応が容易であるという点です。

 

あらかじめ予備加熱を行った材料を用いれば、金型の温度と圧力の条件によっては数十秒以内で形を作ることも不可能ではありません。


自動車メーカー、バイクメーカーがFRPを使おうとする際に熱可塑性マトリックス樹脂のFRPの適用を目指している第一の理由は、この成形スピードにあります。

 

さらに成形スピードというメリットだけではなく、熱硬化性には無い「靭性(じんせい)」という特性を有することを忘れてはいけません。

 


熱硬化性樹脂のように複雑な三次元架橋を持っているのではなく、長い分子が絡み合っているような形態であるため、比較的変形に強く、そして粘り強く衝撃に耐えるという「耐衝撃性能」に必須である高い靭性を有するのも熱可塑性樹脂の特徴です。

 


その一方でデメリットもあります。

 

最大のデメリットは耐熱性が低い事。


熱可塑性樹脂の中で最高の耐熱性を有するスーパーエンプラの代表格であるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)でも、ガラス転移温度は143℃程度。高耐熱のエポキシのガラス転移温度が200℃前後であることを考えれば熱に強いとは言えない、ということがわかると思います。

 


また、PEEKのプリプレグを成形しようとするとガラス転移温度を大きく上回る400℃近くまで金型を加熱する必要があり、さらにそれを脱型できる温度(80℃前後)まで冷却しなくてはいけません。

 

この様な高温からの冷却は設備に大きな負担をかけるだけでなく、金型も線膨張の影響で縮んでしまうため、成形部材の寸法精度は低下する可能性があります。

 


さらに、外観も結晶化などにより白濁する、そして表層に凹凸が出ることも多いです。

 

熱可塑性樹脂としては、FRPのマトリックスに多く用いられている、ナイロンだけではなく、スーパーエンプラである、PEEK、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEK(ポリエーテルケトン)、PEI(ポリエーテルイミド)などがあります。

 

 

 

 

いかがでしたでしょうか。


FRPの場合、マトリックスとして選べるのは基本的に熱硬化性樹脂か熱可塑性樹脂。

 

アプリケーション、製造プロセスといった観点の要件を良く考えながらマトリックスの選定を行うことが、FRPを用いた製品を世に送り出すためには重要です。

 

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